2016年6月1日 園長だより
2016年06月01日 / 園長だより藤幼稚園のご父母のみなさまへ
皆様、いかがお過ごしですか?まもなく梅雨入り、長靴、雨傘、レインコート・・・出番が多くなりますね。うっとうしいこの時期ですが、子どもたちのカラフルな長靴が各クラス前にそろえてある光景を見ると、とてもかわいく感じます。同時に、その長靴をそろえている子どもたちの成長やそれぞれが育ち合っていることが実感できます。雨が降り、長靴を履いて育つこともたくさんあると思います。雨も子どもが育つ良い教材になりますね。
先日の遠足、多くの皆様のご参加を頂き、無事に終了することが出来ました。短い時間でしたが、ゲームをしたり、お弁当を食べたりと楽しいご家族の思い出になったことと思います。特に、延期した年長さんの遠足時は、天候の状況を見ながらの開催となりました。この日に合わせて、多くの方々がお休みを取って頂いていることも含めて判断させて頂きました。結果、なんとか無事(?)に開催出来てほっとしています。雨降って、地固まる…ではありませんが、空模様を気にしながらの遠足、各ご家族様にとって印象深い遠足になって頂けた…と勝手に思っています。皆様のご理解ご協力に感謝申し上げます。ありがとうございました。
また、藤の会の役員さんの顔合わせ会もありました。昨年度まで大変お世話になりました本部チームをはじめ各チームご担当者、各メンバーの皆様方、本当にありがとうございました。お陰様で無事終了することが出来ました。心より感謝申し上げます。
新役員さんにつきましては初めてのことも多いと思いますが、幼稚園同様、藤の会の活動もみんなで力を合わせることは同じですので、ご心配なさらなくて結構です。それより、子どもの幼稚園時代の成長を藤の会活動を通して側面からご覧頂き、楽しい子育て時間を送ってもらいたいと思います。どうぞよろしくお願い致します。
≪地域の歴史の一端≫
早朝、澄んだ空気の中、ウォーキングをしていると、部分的に赤黒く染まった歩道を見つけました。もしや…大事件か?と思いきや、見上げるとそこにはたくさんの桑の実がなっていました。熟した桑の実が落ちて歩道が赤く染まっていたのです。
ふじようちえんがあるこの地域を砂川地域と言いますが、以前は、養蚕が盛んに行われ、たくさんのカイコが飼われていました。そのカイコが桑を食べていましたので桑畑が多く存在しました。養蚕業で生計を立てている農家は、カイコをオカイコ様と呼び、家族のように大切にしていました。地域の特徴を表している例として、今年、創立144年目を迎えた地元の立川第9小学校の校章には桑の葉がしっかりと描かれ、堂々と地域を表しています。いわば、桑は、この地域のシンボルなのですね。
ちなみに、現在、立川市で養蚕業をされている方はいらっしゃらないそうです。
以上、大切なお子様が育っていく、ふじようちえんがある地域の歴史の一端でした。
≪いちごで我慢する力≫
スマイルファームでは今、トマト、キュウリ、ナス、じゃがいも、ズッキーニ…、たくさんの野菜や果物が順調に成長しています。収穫して食べるのが楽しみですね。
先日、いちごがたくさん採れたので、全園児で1人1粒、食べてみました。スマイルファーム産いちごは、無農薬(約20年間、消毒等々は一切していない畑)で、形は小さいのですが、とても甘く香りがいいのです。普段はお家で何粒かのいちごを食べていると思いますが、ランチの時は、たった1粒です。だからこそ、いちごが愛おしく思えて、大切に食べようと思ったのでしょう。見ていると、あるお友だちは、ランチの最後まで取って置き、大事そうに、なめるよう少しづつ食べていました。また、あるお友だちは、先生から配られるやすぐに食べていました。どちらでもいいのですが、クラスという集団の環境だからこそ、自分だけもっと欲しいと思っても、それは出来ないことと子ども自ら考えるのです。そこにこそ、集団の中での育ち、つまり、個人のふるまい方や協調性、我慢すること等々が培われていくものと考えます。どうしても、ご家庭ではこうは行きません。特に、豊かでモノがあふれている現代、ご家庭で、この‟我慢する力”を養うことが大変なことのようです。難しいですが、大人が押し付ける我慢ではなく、それぞれの子ども自らが発揮する我慢の力を育てていきたいと思っています。
幼児教育の重要性に関する海外の研究資料に“マシュマロ・テスト”(満足の遅延実験に参加した子どもたちの追跡調査)というものがあります。マシュマロ・テストとは、目の前にマシュマロを1つ置いて、親がその部屋から去りますが、15分後に戻ってきたとき、このマシュマロを食べていなかったら、もう1つマシュマロをあげるという、今食べるか?我慢してあとでマシュマロを2つもらうか?を選んでもらう実験です。1つもらう子どもは我慢ができない子ども、2つもらう子どもは我慢ができる子どもとされました。この実験の凄いところは、4歳時点でマシュマロ・テストを行い、40年以上追跡調査をし、検証したところです。結果として、我慢できる子どもたちは、大学進学適性試験の点数が良かったり、成人に達した時の社会的能力が高く、肥満傾向にならなかった等々、好ましい結果が見られたそうです。
大人が強制したものではない、それぞれの子ども自らが発揮する我慢の力は、日常の子どもたちの間での遊び、例えば、自分が何かになり切り、1つの役を演じる○○ごっこ遊びなどの中にあるように思います。子ども同士の遊びの中にこそ、お友だちと協力、協調することや我慢する力が培われるものと思います。
今、幼児期に育むべき力や姿勢として、OECD(経済開発協力機構)などが提唱する「社会情動的スキル」、日本では「非認知能力(スキル)」と呼ばれ、今後、幼児教育の中で意識的に育てることが求められています。私たちも、保育の中でこのIQなどの数値化される認知能力と違って、目に見えにくい非認知能力…粘り強さ、協調性、我慢力、挑戦する力等々…を育てることもしっかりと視野に入れて日々の保育に取り組みたいと考えています。
まぁ、一粒のいちごから我慢力まで話は展開しましたが、例えば、おたんじょうび会で行っている、大きな1枚のおせんべいをグループ6人で相談し、割り、分け合って食べること。この時にも、子どもたちの様々な思い、大きい、小さい、もっと欲しいけど我慢するとか…が育っているものと思います。こんなふうに、子どもがおもしろいと感じたり、関わったりしたくなる素材をたくさん用意していこうと思っています。益々、子どもたちの育ち、その中味に興味がわいてきました。
(参考文献:マシュマロ・テスト ウェルターミシェル著 早川書房 )
園長だより vol 166 (2016.6.1)