2008.5 園長だより
2008年05月30日 / 園長だより藤幼稚園のご父母のみなさまへ
普段、何気なく通る道端にアジサイが生えていたことに気づきました。もうすぐきれいな花が咲くことでしょう。ふと見ると、葉っぱに小さなカタツムリがしがみ付いています。アジサイにカタツムリとくれば、いよいよ梅雨入りも近いようですね。
皆様、いかがお過ごしですか? これからの季節、『雨の中、大変ですね!』の声があいさつ代わりになりがちです。体調を整え、お元気でお過ごし下さい。
この季節、晴れた日の幼稚園は、とてもさわやかな空気が流れ、心地よい風が通り過ぎて行きます。今、年長さんは、窓を全開にして部屋で初めての絵具に挑戦、また屋根の上では英語のレッスン、年少さんは、虫探しに真剣な目をしたお友だちや屋根の上リレーで汗びっしょりの子どもたち・・・それぞれのクラスからとても元気なお友だちの声が聞こえています。初夏から夏へ、子どもたちの身体も心も大きく育っていきます。園生活にもすっかり慣れ、多くのお友だちにも出会えて安心した中でそれぞれに園生活を楽しんでいるようですね。
≪歯と縁の下≫
ご存知のように6月4日は、虫歯の日、各地で歯関連のイベント等が行われ全国的に歯への関心が高まります。この機会に、みんなで正しいハミガキ習慣を身に付けましょう。
時々、お友だちが、『先生、見て、見て!!』と乳歯の抜けたことを報告してくれます。歯が抜けたことが大ニュースだったり、大人の歯が生えてくるのがうれしかったり、さらに、いよいよ大人の仲間入り?をだれかに言いたい、伝えたいと言う気持ち・・・なんか分りますね。ともかく、誇らしげに抜けた歯や抜けたあとを見せてくれたお友だちの心もいよいよ大人の仲間入り?と言うところでしょうかね。
『上の歯が抜けたら、縁の下へ、下の歯が抜けたら屋根の上へ投げる』と言うことご存知ですか?上の歯は下へ伸びるように縁の下へ、下の歯は上に伸びるように屋根の上に・・・と言う健康な歯を願う風習なのでしょうね。この風習、言い伝えは国によっても様々なようです。米国、カナダ、イギリス等では、抜けた歯を枕の下に隠しておく“歯の妖精”がやってきて抜けた歯を持っていき、コインと交換してくれるということです。(コインをお母さんがお小遣いとして枕の下に隠すらしいのです。)また、チリやコスタリカでは、抜けた歯をイヤリングにして身につけるそうです。ちょっと前になりますが、『○○人は、歯が命』のように誰にとっても健康な歯でいたいものですね。それより、縁の下と言ったら、ポカァ~ンとした顔、なるほど、いまどきの子に縁の下は分らなかったようですね。(子どもへの伝え方も、時代と共に変化しなくては・・・)
≪芝生と裸足と雑巾と・・・≫
園庭も、芝生の植付け作業が終了し、今は見渡す限り緑です。そして、毎日散水しながら養生の期間になっています。基本は芝生なのですが、やがて、いろんな草もある原っぱ的なものになれば面白いと思っています。その上で子どもたちが遊び、虫を見つけたり、花を観察したり、何より草に触れ、草の匂いを感じて取って育って欲しいのです。さらに草の上は裸足にしてみようとも考えています。足の裏から感じる草や土の感触は、必ず子どもたちの育ちに貢献するものと考えます。さらに、汚れた足の裏は、昔風ですが、バケツに汲んだ水でゆすいだ雑巾で自ら拭いて部屋に入る・・・なんて考えています。
そのうち、ご家族みんなで草の上で大の字になって、思いっきり大きな空を見たり、流れる雲を追っかけたりしてみてはいかがでしょうか?当然、バケツと雑巾は用意します。
ふじようちえんが、そんな風にご家族のお役に立てたら幸せです。
≪日本建築学会賞受賞≫
多くの方々のご協力によって出来上がり、多くのお友だちが育っているこの園舎が建築・デザイン・教育・保育等々各方面より、また海外メディア等からも多くのご評価を頂いております。そんな中、この度、建築家の手塚貴晴・由比ご夫妻が、この園舎で『日本建築学会賞』を受賞されました。私どもは、この栄誉を皆様にお伝えするすべを知りませんが、建築界では最高の賞、音楽で言えばレコード大賞のようなもの、いや、それ以上とのこと、恐縮しています。下記は、大変なお褒めの言葉ですが、受賞の理由です。ご一読下さい。
ふじようちえんは、東京の郊外に広がるのどかな環境の中にあって、忽然と楕円の姿を現す建築である。しかし、足を踏み入れると、建築そのものの存在が消えるほど、エネルギッシュな600人の園児と彼らを育んでいる集団が出迎えてくれる。窓ともドアとも壁とも言えない建具が、屋根と地面の間をおおらかに仕切っている。何処がどうなっているのかを考える暇もなくお祭りの群集に紛れ込んだような熱気に包まれ圧倒される。めまいがするほどの躍動感である。それが故に、屋根全体を第二の園庭としたウッドデッキの上に立ったときの、伸びやかな広がりはすがすがしい。この建築が持つ際立った二面性を、高々2mほどのレベル差で感じることが出来るのである。同時に、全体を単純なエレメントに凝縮した、建築作品としての力強さを感じさせている。
そもそも、建築は自然の驚異から人を守って、人が集まる場の広がりを生み出すものである。特に、幼い子供たちが多く集まる幼稚園や保育園や学校といった施設は、集うものの過半が、弱者として必要以上に過敏に扱われがちである。さらに、少子化の時代に突入した現在、親たちのわが子への関心はエスカレートし続け、怪我や汚れを成長の証として喜ぶ余裕もない。預かる側も危険回避にエネルギーを燃やし、どこか本末転倒な議論が繰り返されている。そんな社会に対して、建築に何が出来るのか問われるかもしれないが、この幼稚園はその一つの解を与えてくれているようである。寒ければ走り回って身体を温め、日向ぼっこすればよい。暑ければ、木陰に涼んで水を飲み、風に吹かれていればよい。ふじようちえんはそんな空間を用意している。
機械を使って環境を制御するのではなく、「人が動いて心地よい居場所を見つけたらいいじゃないか」とでも言っているような単純な建築が。今の時代にこそ評価されるべきである。高気密高断熱だけが地球環境への配慮ではないことを、そして忘れかけていた人間の感覚を思い出させる建築である。なんといっても屋根の上を無我夢中に走り回る園児の姿は、幼い子供の本能を呼び覚ましている。そのような感性を伸ばす幼稚園の存在は、園を運営する関係者の熱意と実践の上にあることは言うまでもないが、人と建築の両輪がそろった園舎であるからこそ、優れた建築なのである。よってここに日本建築学会賞を贈るものである。 日本建築学会 記者発表資料より
園長だより 2008. 5. 30 vol. 60