2010.4月30日 園長だより
2010年04月30日 / 園長だより藤幼稚園のご父母のみなさまへ
例年よりも寒さがちょっと頑張ってしまった春、暖かさを運んでくるはずの春雨も肌寒さを感じる日々が多かったですね。でも、この寒さのお陰で桜を長期間楽しむことができました。皆様、お元気でお過ごしですか? いよいよ5月、そして、GWご家族でいっぱい楽しんでくださいね。
今、こいのぼりが悠々と泳ぐ新緑に包まれた園庭を子どもたちが元気に走り回っています。 みずみずしい新緑と元気な子どもたち、これから育つもの同士、本当によく似ています。
そんな思いで、ただ眺めていたのですが、ここに流れる空気はまさしく“生命の息吹”に溢れています。子どもたちの育ちと新緑の成長、どちらもイキイキしていてとても心が弾みます。
今年は暦の関係で、『こどもの日』と『母の日』の制作が同時進行し、年長は、こいのぼりの制作をし、柏餅を食べ、お母さんへのプレゼントを一所懸命作る・・・盛りだくさんの内容ですが、作品の中にそれぞれの思いを込めて頑張りました。季節の制作を通して、できることが一つづつ具体的に増えていくことを実感しながらの日々をおくっています。
また、新入園のお友だちにとっては、ご家族から離れて初めて過ごす幼稚園での時間であり、自分でやらなくてはならないことがいっぱいある生活が始まりました。なんでもいいから何か一つ、幼稚園の中で好きになったり、安心できる居場所が見つけられるといいなと思っています。不思議と何か自分なりのものや場所を見つけると幼稚園がより面白くなり、子どもの「通いがい」が出てきて、親から自立する一歩になったりします。
幸い、これまで見ていて、お友だちは、最初に感じていた不安や心配から、毎日が期待と楽しみへと変わってきています。みんな、それぞれの関わり方で環境になじんでいます。
「親」という字、“木の上に立って見る”と書いてあると言われますよね。分かっていても、じっとしていられないのが親というものですよね。親から巣立つこの時期、お子様が出来るだけ「一人でできるように」という思いを大事にして見守って頂ければと思います。
お友だちもでき、遠足に行ったり、各クラスとも笑顔がいっぱいの5月、『みんなで過ごす時間が、みんなを育てる』 そんな思いを大切に薫風を感じつつ、過ごして行こうと思っています。そうそう、当然、あいさつや靴をそろえることも大切に。
≪育つと育てる≫
さて、皆さん「子どもは自ら育つものでしょうか?」または、「子どもは手間隙かけて、親や大人が教え導いて育てるものでしょうか?」前者の子どもは“自ら育つ”という見方の中味は、「子どもは様々な能力や可能性を秘めている素晴らしい存在。だから出来るだけその能力を発揮できるように環境を整えてあげよう」と言うことです。後者は、「子どもはとにかく非力なもので、自分では何も出来ない存在。だから、親が教え導いて鍛えていかなければ、ろくな者にならない」という考え方です。子どもってはたしてどういう存在なんでしょうか?
このことは、私たち親自身が子どもをどう見て子育てに臨んでいるかを改めて考えさせてくれます。どうぞ皆さまも一度検討してみて下さい。
子どもたちを見ていると、「育つ」でも「育てる」でも無く、それ以上の何かがあるような気になります。「生きる」ということでしょうかね?
≪あいさつとお返事≫
私はよく「幼稚園でたくさんのお友だちを作ってね」と言っています。そして、どうすればお友だちになれるか?そのコツは、「あいさつとお返事」だよと伝えています。
「おはようございます」「こんにちは」や「ハイ」の返事をちゃんとすると、されたお友だちは、笑顔になったり、安心してくれ、すぐお友だちになれるんだよと。大人社会でも、ろくにあいさつや返事もしてくれないことがある現在、私たち親、大人が手本となって、あいさつや返事をしっかりして行きたいものですね。あいさつや返事は、人と人を結ぶゴールデンチェーンと言われています。子どもにも大人にも大事なことです。ご家庭や幼稚園から始めていきましょう。
≪見ると観る≫
『人は、見えるものしか見えない』と言われたことがあります。あるご家庭での日常会話。
夫『爪きり、どこ?』 妻『そこの棚の右端のケースの中にあるよ』 夫『どこ? 無いよ!!』
妻『どこ見てるの? 右の端の上にのっているケースよ!』 夫『どこだよ?』 妻、近づいて来て、『しょうがないわね、ここにあるじゃないの』 夫『あっ、このケースか!! てっきり、プラスチックの入れ物と思い、この木の箱、見ていて目に入っていなかった、ごめん、ごめん』
何となく? 心当たりがありそうな・・・単なる物忘れの光景?・・・ではありません。
こんな風に、目の前にあるものを見つけようとするものの、私たちはイメージを勝手につくり、その自らイメージしたものが優先し、目の前にあるにもかかわらず、そのイメージ、思いとちがうと目に入らないことがあります。先入観がなせる業? また、別の言い方をすれば、物事をよく見ていないと言うことになります。さらに言えば、見えるものしか見ていないのです。
“みる”つながりで、次に、「見る」と「観る」の言葉の違いをあげてみます。一般的に定義として、「見る」とは物体の外部を表面的に捉えること、「観る」とは物体の外部から内部まで具体的に捉えること、とあります。
かの有名な経営者本田宗一郎氏は、下記の問いで「見る」と「観る」の違いを実証しました。
【牛の角は、耳の前にあるか それとも耳の後ろにあるか答えられますか?】この問いを牛をよくみている「牛の飼育士」と「牛を描いている画家」に出題しました。結果、答えたのは・・・・「牛を描いている画家」でした。この結果、同じ牛をよくみていても「みる」に違いがあることを発見したそうです。
この例から、『子どもを見るか? 子どもを観るか?』でその子どもさんへの声がけやアプローチもまったく違ったものになってきそうです。表を見ること、中を観ること、両方大切ですね。ちなみに「聞くと聴く」も同じような意味合いでありますね。
園長だより vol . 82 (2010.4.30)