2010.11月5日 園長だより
2010年11月05日 / 園長だより藤幼稚園のご父母のみなさまへ
空は深く澄み、園庭のみかんも黄色く熟してきました。秋の深まりを感じます。
幼稚園の正門から見える富士山も、白いお化粧をし始めていました。その富士山、調べてみると雪で覆われた頂上は、現在マイナス13℃とのこと。冬がもう来ています。
皆様、いかがお過ごしですか?
深まる秋で思い出したのが、昭和記念公園のいちょう並木での銀杏拾いです。焼いて食べると美味しいので、銀杏がお好きな方も多いと思います。私も大好きです。
木に付いている時はいいのですが落ちていたり、ましてや誰かに踏まれたあとのあのニオイ・・・堪りませんね!! 踏まないように注意しましょう。
実は、あのニオイ、いちょうが子孫を増やす為の防衛策とのことです。実験でサルやタヌキに銀杏を与えて観察してみると、いづれも食べず、いちょうの作戦は、まんまと成功・・・と言うことです。
生きていくすべ、防衛策はいろいろあるものですね。喜ばれることも避けられることも、命を継続していく為の方法なのですね。私たちも、子どもたちも、それぞれに生きていくすべを見つけ、鍛え、磨き続けなければいけませんね。
≪クリスマスフェスタ≫
子どもたちは、これからクリスマスフェスタの準備に取り掛かろうとしています。絵や制作物、共同作品、様々な作品が、子どもたちのそれぞれの思いのもとに出来上がっていきます。子どもたちは、楽しみながら、喜びながら、たくさんの想像力を発揮して作品をイメージし、やがて意欲的に、工夫して、楽しんで作品を作ってくれることと思います。本当に楽しみですね。
私は、子どもたちが自分で作った作品すべてが、自信とうれしさの固まりなのだと思っています。大人は、ついつい作品の出来ばえで評価しがちですが、作品コンペではないので一切評価的なことはしません。むしろ、最初にどんな作品を考えたのか?何でもいいからその理由を聞いてみたい。そして、そのために、何を、どのように、どんな思いで取り組んだのか?その過程をお伝えしたいと思っています。今、現在の子どもそのものの姿を表現する一つの手段としての作品となればうれしいです。
≪シンガポール≫
ふじようちえんは、おそらく、幼稚園では珍しく、日本全国または世界各国から見学者が多く見えて頂く幼稚園だと思います。また、逆に、ふじようちえんの話が聞きたいと言われて、全国各地からお声掛け頂くことが時々あります。都合がつく範囲で出向いてお話をさせてもらっています。そんな中、先日、海外の幼稚園関係者からシンガポールで講演をしてほしいと頼まれ、断りきれず2泊4日の強行軍で行ってまいりました。2回の講演会と施設見学等々があるとても充実(忙しい)した行程でした。
シンガポールの教育は、とにかく競争、競争の日々を送っていると以前から聞いていましたから、何でふじようちえんが・・・と言う思いもありました。
当日は、シンガポールはもちろん、マレーシア、インドネシア、中国、バングラディシュ等々の国から約300人もの先生方が参加されて研修会が始まりました。
会場内にある3つの大きなスクリーンに映し出されるふじようちえんの園舎や様々な活動内容が、皆さん初めて見るものばかり、ちょっと刺激が強かったのか?
パワーポイントの画像が変わるたびに、会場からどよめきに近い声が何回も上がっていました。思った以上に印象的だったようで、講演終了後、大変多くの皆様に質問攻めに合う状態が続きました。こんなの初めてでした。が、行った甲斐がありました。
講演を終えて、シンガポールの方々が感じていることを少しわかったような気がしました。それは、人材だけが唯一の資源と断言するシンガポールは、確かに競争社会ではあるけれど、競争社会であればあるほど、さらなる教育の深堀りの必要生と教育の持っているほかの価値観や役目、つまり、幼児期に本当に必要な環境、子どもが育つということをあらゆる角度から知りたい、聞いてみたいのだと思いました。また、これからの教育の方向性をいろいろ模索しているようにも思われました。
そのためにか?どうか?わかりませんが、競争社会で育つ子どもと対極にあるような素朴なふじようちえんの子どもの育ちに大変興味を持っていただいたのかな?なんて想像しました。おそらく、そのうち、“子どもの育ちから学力へ”と言う内容のレポートが届くと思います。楽しみにしています。私流に言えば、幼児期こそ“遊びの中に学びの芽”があり、子どもたち同士でその芽をさらに育て合うのが幼稚園ということでしょうかね。
≪今、なんで・・・≫
B1選手権や東京ラーメンショーがテレビで盛んに取り上げられている近頃ですね。
私は、この裏にある人々の気持ちや今の時代の本質を知ってみたいと思い考えてみました。どちらも美味しいということは当然ですが、多分、B級グルメにしてもラーメンにしても“手が届く美味しいもの”と言うのが共通項だと思います。確かに料理番組で高価な材料で豪華な料理を作られても、一生に一度、口にすることは無いものばかりというのが現実です。そんなものより、日々の生活の中で味わえるものに大切なことがあることを知ったのではないかと思います。それは、ご家族や好きな人、仲間と一緒に食べる時間をとれること、同じものを食べてみんなで楽しめること、これこそ日常の中にある“本当の豊かさ”だと知ったのだと思います。
豪華なものを身につけ、立派な雰囲気を醸し出した背伸びする時代から、見栄も張らず等身大で生きていく時代へ動いているようです。ふと気づくと、干し柿が目に入りました。そうです。私は、今、スマイルファームでとれた渋柿でつくる干し柿づくりを子どもたちに見せることに本当の豊かさを感じています。
園長だより vol . 88 (2010.11.5)