ふじようちえん

2015年6月4日 園長だより

2015年06月04日 / 園長だより

藤幼稚園のご父母のみなさまへ

これから梅雨を迎えると言うのに、このところの異常な暑さは、初夏を通り過ぎて真夏になってしまったかのようです。このまま続くと、長靴、雨傘やアジサイ、雨ガエルの出番が少なくなりそうで、ちょっぴりさびしい感じもします。雨で出来た水たまりを飛び越えようとする長靴を履いた子どもたちの風景や雨にぬれたアジサイの花の美しさに、梅雨ならではの情緒があり、こんな空気を子どもたちにも感じてほしいなと思っています。まぁ、これも昭和的感覚なのでしょうね!?
皆様、いかがお過ごしですか?多分、もうすぐ梅雨入りです。お天気に負けず、みんなで元気に行きましょう!! もちろん、子どもにも負けずに!!(私は負けそうです)

話しは変わりますが、始業式でお約束した通り、毎日、子どもたちは自分から元気なごあいさつを大変良くしてくれます。あいさつは、大人になっても人と人を結ぶとても大切な行為、さらに続けて、きちんとしたごあいさつがどこでも出来る子どもに育ち、あいさつ一つでその人柄が分かるような大人なってもらいたと思っています。

そして、もうすぐ家族参観日です。『参観日、いつものお部屋にパパ、ママが…うれしさ、楽しさ、恥ずかしさ…いろんな思いで子どもは育つ!!』子どもたちの心情を察すると、期待でワクワク、いつもと違うのでドキドキ…と言う感じでしょうか?
親子で制作したり、ゲームしたり、みんなで楽しい時間を過ごしたいと思います。そんな中に、お子様の幼稚園での様子や成長した姿を見て頂けたらと思います。どうぞ、ご家族で過ごす大事な時間、よい思い出になりますように!! お待ちしています!!

≪沢ガニで育つ!!≫
今、園長席前の木のたらいに沢ガニを飼っています。先生たちが休日に知っている渓谷、小川やご実家の近所で探してきてくれたものです。子どもたちは、毎日、覗きこんでよくよく見たり、時には指で触ったり、つかんでみたりしています。数匹の沢ガニは子どもの興味を一身に集めています。子どもたちが沢ガニをつかもうとしている時、私は、冗談で『〇○ちゃんの指が挟まれますように!!』と手を合わせてお祈りのポーズをします。子どもたちは、キャーキャー言いながら、笑い、また沢ガニをつかまえようとします。私の思いはただ一つ、“さわってわかる”ことを体験してもらいたいのです。単純に、触って実感し、こういうものなのかと理解してもらいたいだけなのです。理解は、驚きに始まるという言葉もあるように、理解、知識、学びへの入口です。英語では“Hands On”という概念で、子どもの自然体験学習プログラムの一つでもあります。やがて、子どもたちは、誰からともなく、『あんまり触ると、カニさん疲れちゃうよ!!』と言いながら、手を引っ込めて、沢ガニに触るのをやめ、ただただじっとその動きを見つめるのでした。沢ガニを触っているうちに、沢ガニがいとおしくなり、思いやり、命への慈しみのようなものが湧いて来たのだと思います。こんな心の変化、成長にも沢ガニは、しっかりと貢献しているようです。
最近、特にOECD(経済協力開発機構)からの世界へ向けての提言でもあるように、人生、始まりの5年間が、後の80年を決めてしまうと言われています。つまり、人が成長して行くに伴って出てくる様々な社会問題や青少年問題をその時点で解決をしようとするより、出来るだけ乳幼児期に環境を整えるべく人的、金銭的に投資した方が、多くの社会問題にその時その時に対応するよりも社会的費用負担は少なく済む、つまり、社会全体で捉えると、乳幼児期への投資で確かな未来を描く方がより生産的であり、より良い社会づくりに効果があるという考え方です。また、IT社会になり、幼児期の過ごす環境や親子関係、五感に響く体験…が重要度を増しているとも言われています。こんなことから、沢カニの役目の重大さを言うのは、少々強引ですが、生き物とのふれあい、これからもより大事にしたいですね。
≪お伝えしてなかった!!…園舎は子どもが育つ道具だと言うことを!!≫

ふじようちえんを設計した手塚貴晴氏が、WebのTED talkにご出演され、ふじようちえんについて楽しくお話した模様が今公開されています。是非、ご覧ください。
また、日本のTVでも園舎と子どもの育ちについてお話しさせて頂くこともありました。たまたま、TV放映後、あるお母さまから『園庭がデコボコしているのは、子どものからだの軸、体感づくりに役立っているのですね。そう言う訳だったのですね!!』という言葉を頂きました。そうだ!!みんな分かっていると思っていたのは自分だけだったんだ!!新園舎になって丸8年、子どもたちの育ちにどう役立つ園舎にするか当時の思いを…肝心な現在のご家族様にお伝えしていなかったことに今さらながら気づきました。申し訳ございませんが、遅ればせながら数回に分けてお話させて頂きます。

まず、今回は楕円形園舎とFujiのロゴについてです。
今でもそうですが竣工当時、通行する方々が立ち止まり、園舎を眺めている光景をよく見ました。確かに、ガラス張りで平屋、楕円形の建物はあまり見たことがありませんし、その上、屋根の上で保育活動しているものですから…。確かに、楕円形と言う形に興味をもって頂くのはありがたいのですが、ただ単に建物や景観だけに興味を示してもらうより、園内で起こっていることにもっと興味をもってもらいたいと思い“子どもが育つ場所”としての園舎・環境の中味をお伝えするようになりました。
計画当初、中越地震後でもあり、まず、『地震に強い建物にしたい』という思いが基本にありました。そのため、平屋造り、基礎工事から三角形のつなぎ合わせで構成していてとても軽量で、強い建物です。仕様や構造だけではなく、子どもの育ちをモンテッソーリ教育的な考え方、捉え方を基本に『より、ふじようちえんらしく』変化したいという園舎改築への強い思いがありました。そして、たまたまビックサイトである幼児教育関連の展示会で出会った部長様にご紹介して頂いたのがアートディレクター佐藤可士和さんです。2003.3.3に来園された時、土と木しかないふじようちえんに何かを感じ、好きになって頂きました。“この空気を大切にしたい”“子どもたちは遊ぶことが仕事”“遊ぶことでいろんなことを学んでいく”“園舎は一つの巨大な遊具”と言う意見を交換しながら、すすめて来たプロジェクトでした。
 そして、建築家の手塚ご夫妻との出会いを通じて、私が各クラスに行き、園児たちに“言葉のふりかけ”と称する声掛けをよりし易くするように、当時のコの字型園舎を私の動線を考慮し繋げて出来たのが、楕円形園舎が誕生した本当の理由です。
また、手塚先生は、『みんなが繋がっていて、ぐるぐると永遠の追いかけっこが出来て、仲間はずれが無い建物』と素晴らしいお話もされています。最初は5×5㎝位の小さなメモ用紙(本当はガムの包み紙らしいです)に描いた手書きの楕円形程度の走り書きから始まったそうで・・・。信じられませんがその手書きの楕円形が現在の形です。(正直、かなり工事は難しかったらしいです)
手塚先生の楕円形に感じて、可士和さんもふじようちえんのロゴ(文字形)を考案しました。子どもたちがハサミで紙を切ってごちそうづくりをしていることから、折り紙をハサミで切ったふじようちえんロゴが誕生しました。可士和さん手作りのひらがなフォントは50音、ABCすべてあります。ちなみに、可士和さんはすごく多忙にもかかわらず、『星の形を切るのに、ほぼ一日かかったんですよ。』と言ってました。
それにしても、今をときめくお2人が、かたや折り紙をハサミで切り、かたや手書きの楕円をメモ用紙に書いて始まった、ふじようちえん・・・このIT時代に不思議ですね。
 さて、まだまだお話しは、始まったばかり、たくさんのことをお伝えしたいのですが、紙面に限りがあり、次回以降にもお話しします。どうぞよろしくお願いします。

園長だより vol . 152 (2015.6.4)