ふじようちえん

2012.12月3日 園長だより

2012年12月03日 / 園長だより

藤幼稚園のご父母のみなさまへ

 先月半ば、『赤ちゃんの芽、生えてきたよ!!』と言うお友だちの感動の声に、園庭を見ると、ところどころですが芝生の芽が出てうっすら緑になっていました。
それから約半月、今、園庭は鮮やかな緑に覆われ、冬の日差しに眩しく輝いています。種をまき、水をあげ、日がさして芝生が育って来ています。同時に、子どもたちは、目の前が栽培室という環境で、毎日、毎日、芝生の成長を見ながら過ごして来ました。植物の成長、その早さ、不思議さ、自然の凄さ等々…を感じてもらえたらいいですね。
 師走を迎え、寒さも強まり、本格的な冬到来です。皆様、いかがお過ごしですか?
今、子どもたちは、クリスマスフェスタに向け、作品づくりや歌の練習にそれぞれに頑張って、楽しく日々を過ごしています。

≪塩むすび≫
 先日行いました屋根の上での“おにぎり会”。あまりのおいしさに、お替わり、お替わり…の声が止みませんでした。青空のもと、みんなで食べた塩むすび、指についたごはん粒もきれいに食べて初めて分かるごはんの味、何気ないことですが、この経験をして欲しかったのです。
 数年前、小5の女の子のお母さんが、うちの子が学校から帰って来て『何か食べるものある?』と聞くのです。その時『何にもないよ』と答えると、『じゃ、塩むすびつくって!!と言うんですよ』と話して下さいました。幼稚園の時に食べた塩むすびがとても美味しくて、その味を思い出すかのように時々、塩むすびをリクエストされるそうです。確かに、お塩とお米の味だけですが、おいしいですよね。
一年に一回、屋根の上で、小さな手にのせ、みんなで食べる塩むすび、ほんのわずかな時間ですが、子どもたちにとっては、味の記憶、美味しさの思い出として、しっかりと心に残って行くものと思っています。
 よく、“3つ子の魂、百までも”と言いますが、むしろ、私は“一生ものの始まり”と言っています。それぞれの子どもたちの永い人生時間を見た時、一生に渡り活かされるもの、使うものの多くを獲得する時期が幼児期なのです。出来るだけ正しいもの、正しいことを身につけるべきだと考えます。その正しいものやことを癖付けし、その良い癖付けが習慣レベルになるまで指導して行きたいと思います。
特に、心、行動、考え方の良い癖付けが大切だと感じています。
 “人生は、その能力によって決まるのではなく、その性格によって決まる”と聞いたことがあります。みんなが更に良くなって幸せの方向に進むように、人生の土台となる幼児期、先生たちみんなで力を合わせながら、子どもたちの育ちに役立つように頑張ります。

≪記念樹≫
 “無患子”皆さん読めますか?“むろくじ”と読みます。子どもが患うことが無いように…と言う思いを込めた樹木の名前なのです。いつもお世話になっている藤の会本部の方から、今年度の記念樹としてお伝え頂きました。読めないけれど、木の名前が意味していることは、子を思う親の心そのものです。心が温かくなる記念樹ですね。
調べてみると、無患子の実は、羽子板の羽根に付いている丸い玉に使われるものと知りました。医療が発達していないその昔、子どもが無事に育つことを祈り、その思いを無患子の実に託し、羽子板の羽根で子の健やかな育ちを祈ったものと想像しました。
「親思う心にまさる親心…」親心、今も昔も同じ、無患子、益々楽しみですね。

 ≪トイレのスリッパと育ち≫
 ふじようちえんでは、トイレのスリッパが床に貼ってある足形テンプレートに合わせるよう並んでいます。何を意図してこうしているのかご説明します。
 幼児期に行う遊びとして、例えば公園や川原での石拾いがあります。皆さんも、幼い時、近くの公園で小石を10個位拾い集めたことあると思います。子どもって何故か?数個の石ころを拾うと、大きいものから小さいものへと…序列をつけ並べるという行動をします。こんな感じのことは、誰もが何となくやっていた思い出があると思います。しかし、他愛も無いこのような行為ですが、その根底にしっかりと育っていたものがあったのです。実は、それこそが幼児期に芽生えを迎える“秩序感”なのです。秩序感が芽生えてくると、子どもたちはその芽生えた秩序感に指示されるが如く、トイレの足形テンプレートにスリッパをきっちり合わせる行動を取るようになります。スリッパと足形がぴったり合うことで、子どもの心の中に、ホッとした気持ちやちょっとした達成感が湧き、それが満足感になります。園内のいろんな所でそのような行為を行う中、たくさんの満足感は、自信に変化し、いっぱいの自信を持つようになります。やがて、みんな、いっぱいの自信に支えられ自立して行くのです。乳幼児がいきなり自立はしないのです。幼稚園のお友だちは、出来ないことが段々出来てくることを楽しみながら、自立への方向へと向かって育っています。自立を因数分解すると、このようなことになっているのです。
 また、別の観点から、スリッパを揃えることを、『次に使う人への思いやりだよ』と言っています。が、トイレからクラスに帰るお友だちにどれだけ伝わっているか?
 ちなみに、平面上(2D)でテンプレートと合わせるスリッパのことをお話しましたが、これと同じ哲学を使い、秩序感を立体的(3D)に行っているものがあります。モンテッソーリ教具のピンクタワーや茶色の階段…等もそうですが、レゴブロックでもそうです。例えば、いくつかのレゴが合わさり形を作り、それぞれが想像するロケットやお家、いろんな形を可能にしてくれます。でもその基本は、一つ一つのブロックの合体…達成感、満足感、自信を醸造するものとなり素晴らしいですね。

 これからも、ふじようちえんでは、子どもの育つ時期、中身に合わせて、子どもたち自らが、“せざるを得ない状況”をあえて作り出し、子どもの育ちを助長しようと考え取り組んでいきます。
 子どもが育つことが一番上にあり、それに草や木、土、動物、園舎…、そして私たちも、子どもたちが育つための一つの道具として役立つように心がけていきたいと思います。
                      
園長だより vol . 116 (2012.12.3)