ふじようちえん

2010.2月 園長だより

2010年02月12日 / 園長だより

藤幼稚園のご父母のみなさまへ

 歩いていると季節の移り変わりがよくわかります。今朝、あるお宅の庭に梅の花が咲き始めているのを見つけました。不思議ですが、寒さの中、自然の営みに触れ、温かい気分になり心が和みました。
春一番が待ち遠しい今日この頃です。皆様、いかがお過ごしですか?
 
≪この時期に水!!≫
 幼稚園のツリーハウス横にある早咲きの桜(種子島の桜・・・通称ロケット桜)もつぼみを膨らませ、今にでも咲きそうな勢いになりました。立春を過ぎたとは言え、まだまだ寒い中ですが、子どもたちは、なんと井戸水遊びに夢中です。子どもたちに聞いてみると、昨年暮に完成した昔懐かしい手押しポンプで一日一回水汲みをしないと気分が落ち着かないとのこと・・・水を汲み、水を溜め、水をバケツで砂場に運び、またその繰り返し・・・時には袖も濡らし、靴も濡らしながら遊んでいます。一度濡れると次は注意して汲んだり運んだり、時にはお友だちと一緒に協力してバケツを2人で持って運んでいます。井戸水遊びから、注意する力やちょっと先を予測する力が育っています。工夫して、やがて、砂場に湖を造ると言う計画を立て、みんなで協力して実行・・・水と関わり、友だち関係、社会性への展開へと遊びは、進化して行きます。真冬とは思えないような水遊び、その光景の中にも、しっかり育っている子どもたちの姿を見ました。でも、夏になったらいったい・・・どうなるんでしょうか?

≪一生ものの宝箱≫
 先日、有名な日本料理の料理人の方の講演会がありました。あまり聞く機会が無い料理の世界や美味しさについてのお話でした。例えば、日本料理のコースでは、最初の3品(酢物、煮物、魚)で勝負しているとのこと、なぜかと言えば、その3品の味でその後のお料理への期待感を持ってもらうようにしているし、10人位の大勢で食べる時は、どうしても料理より会話が中心になってしまうので順番で出てくるお料理の途中に、飛び切り美味しいものを出し、会話中心の空気から再度料理に注目してもらうようにしているそうです。いろいろな状況を想定しているのです。多分、さらに細やかな気くばり、心くばりが潜んでいるはずです。
 また、私たちは、「ごはんが美味しい!!」とよく言いますが、ごはんのどこが美味しいのか?食感、温度、輝き、香り・・・いろいろな美味しさがあり、どこが美味しいかを見つけていくことも料理人には鍛錬が必要だそうです。では、「なぜ、美味しく感じるのか?」・・・美味しさ=うまみ(旨味)だそうです。その旨味を感じるところ(レセプター)が舌に一ヶ所あり、そこで美味しく感じているのが私たちのうまさを感じるシステムだそうです。ちなみに、旨味と甘味のレセプターは、一ヶ所づつ、苦味のレセプターは50ヶ所以上あり、これは、原始時代より食べて良いもの良くないものを見分ける為に発達したもの。さらに、嗅覚に至っては、約380種類もの匂いを感じるレセプターがあるそうです。なるほど、口より先に鼻で臭いを感じ、食べるもの食べないものを決めて様々な毒から体を守っていたのです。舌より嗅覚の方が、人間が生き続ける為の基盤となる機能ということなのです。
 このお話を伺い、味覚だけでなく、香りや食感も子どもが育つこの時期にこそ大切なこと、そして、本物に触れてもらいたいと思いました。香りを感じること、感じ取れる教育も必要だと思いました。
 幼稚園では、履物をそろえる、戸をきちんと閉める、蛇口をしっかり閉める・・・当たり前のようですが、一つ一つ子どもたち自らが行うように取り組んでいます。なぜならば、この幼児期に身に付いたものは一生にわたっての心構えや姿勢、美しい身のこなしに影響するものだからです。
まさしく「幼稚園は、一生ものの宝箱」という所以なのです。
今でも、私は、保育園当時のお昼に食べた“瓶ヨーグルト”の紙蓋を開けたときの香りを憶えています。香りでよみがえる記憶、あの場面・・・皆様もありますよね。臭いや香りに敏感な社会ですが、子どもの育ちには、いろいろな臭い香り体験も必要なのです。
ちなみに、当然、子どもですから、紙蓋に付いていたヨーグルト、しっかり舐めました。今は、しません。

≪えほん駅伝≫
 今、長時間保育の“今月のプロジェクト”では、「えほん駅伝」と名打って、先生たちが協力し合って毎日絵本を一冊づつ読んでいく保育活動が続いています。駅伝だから、北海道から沖縄までの各都市にシールを貼っていくカードも使い、お友だちが楽しみながら絵本を好きになってもらいたいと活動しています。一般的に、ただ預かるだけの長時間保育と思われがちですが、内容は毎月先生方が思考を凝らしてメニューを考えていて、とても楽しいものばかりです。
 そもそも、ふじようちえんの長時間保育は、家に帰ってもご家族のお仕事やご都合で面倒見る方がいないお子様に対応するものと言うことと、もう一方では、家に帰って面倒を見る方がいるけれども、一人で遊んでもつまらないし、毎日TVやゲームばかりでは・・・まして、外で遊ぶには道路等々危なくて心配。さらに幼稚園でお友だちと過ごす方が、いろいろな体験もでき、ある面、育ちの環境としては良いのではないかと言うものがありました。子どもを預けるにも、両面があるのです。そのような意味で、毎月の長時間保育アクティビティーを全園児に配布させて頂いております。
 毎月のアクティビティーとプロジェクト、いろいろ準備して、子どもの育つ環境作りに頑張って行きます。以上の意味を含んだ上で、どうぞ皆様も、お気軽に長時間保育も子どもの育ちにご活用下さい。やはり、食べ物系の日、作ったり、食べたりの日が人気のようですね。

≪劇で育つ≫
 今、子どもたちは、一所懸命に劇の練習をしています。台詞を覚え、歌を歌い、動きを覚え、自分の出番にドキドキし、人前で緊張する経験をしています。そして、それぞれのクラスが、みんなで力を合わせて一つの劇を作り上げようとしています。
まさに、この瞬間こそが“成長をしている子どもたち”そのものなのです。ついつい大人は劇のうまさや出来栄えに目が行きがち、ものさしを合わせがちですが、成果よりも一人一人がその役に取り組んでいる姿をしっかり見て頂きたいと思っています。そして、お子様がその役を演じるまでのプロセスに思いをめぐらせて見てください。そこには、自立へと向かっているお子様の姿が浮かんでくることでしょう。
とにかく一人でやるしかない舞台の上では、本人がすべてなのです。いくらお父さんお母さんが頑張っても、観客席から応援してあげることしかできないのです。やがて、台詞を言い、出番が終わった時のホッとした気持ちや劇が終わって、みんなでやり遂げた達成感を味わうことでしょう。
子どもの育ちが家族の幸せ!!
そんな劇発表会の一日になりますように・・・。

園長だより vol . 78 (2010.2.12)