ふじようちえん

2009.11月 園長だより

2009年11月06日 / 園長だより

藤幼稚園のご父母のみなさまへ

 11月になり、朝夕だいぶ肌寒くなってきました。コートを出したり、鍋物を食べたり・・・生活のいたるところで秋から冬へのバトンタッチが行われている今日この頃です。
 幼稚園の木々も段々と赤みが濃くなりつつあります。屋根の上に積もった落ち葉を集めた落ち葉プールで子どもたちは、落葉を舞い上げたり、ふかふかの落葉を踏みしめたりと思い思いに落葉と遊んでいます。まさしく秋の感触を楽しんでいます。落葉に埋もれる経験が何に役立つのか?わかりませんが、この落葉の匂い、埃っぽさ、秋を体感した感触を思い出すことが出来る大人になってほしいと願っています。  

 さて、今年は、毎日のようにインフルエンザを気にせざるを得ない晩秋になってしまいましたが、皆様、いかがお過ごしですか?
 この度のインフルエンザ感染に際して、拡大阻止への対応、ご協力頂きましてありがとうございます。お蔭様で当園ではひとまず治まっているように感じています。が、市内外の各幼稚園、小学校、中学校にて感染拡大がある状況を聞きますと、あくまで一時的なものと思われます。本格的な流行は、従来の風邪と合わせてこれからが本番です。引き続き、各ご家庭においてインフルエンザにかからないよう予防をお願いするとともに、もしかかってしまった場合、さらに、ご兄弟姉妹等ご家族が感染されてしまった時には、登園せず自宅にて療養され、集団生活である幼稚園での感染拡大を招かないように重ねてご協力お願い致します。

<聞くこと>
 寒くなればなるほど、子どもたちの『おはよう!!』と言う声がいっそう元気に聞こえます。これは、子どもの元気さが澄んだ空気に響き渡っているからだと思います。「子どもは風の子」と言われる要因かも?しれませんね。
 さて、朝、登園してくると『おはよう!!』の挨拶の後、突然『今日、お迎え』とか『今日、お父さんが来るの』と言われることがよくあります。始まる前から帰りを伝えられました。早く帰りたいのかな?とか、お母さんに会いたいのかな?と思って見ているとそうではなく、元気よく園庭で遊んでいます。
多分、自分なりに今日一日のイメージを付け、長時間保育やっても帰りには親が来ると言うことを言うことで、自分の心の中で理解し、納得しているものと想像します。また、一日の流れを見通し、それぞれにおかれた状況に折り合いをつけ、自分なりに安心し、心の安定を作り出しているものでしょう。
何気ない日常の中でみんなの心も成長しているものですね。

 また、私は、毎日のように子どもたちから「園長先生~見て、見て~~、とか昨日ねぇ~どこどこ行ったんだ。」と言うお話をよく聞きます。そして、お友だちは、ひとしきり話すと走って去って行きます。ふと、あのお友だちはなんだったんだろう?と思う時があります。が、多分、多くのお友だちは、誰かにただ、ただ聞いて欲しいのだと思います。だれかに聞いてもらうことで安心するのでしょうね。あまりに日常過ぎて見過ごされやすいことですが、子どもが育つには意外にも子どもの話を聞くことが大きな役割をしているのです。
 聞いてあげるのとあげないのでは、大きな差が生じると思います。自分の話しを聞いてくれる、自分の話を喜んでくれる、自分の存在を認めてくれることは、生きる力をつくるに上での大切な自信につながります。
 子どもの話を聞く大人の存在は、その子の生涯に渡る生き方の基本姿勢に関る問題になるかもしれません。どうぞ、忙しくても、子どもの話を聞いてあげてください。特に親に話を聞いてもらいたいのが子どもの心ですよね。
 とは言ったものの、朝から晩までしゃべりっぱなしのお友だちもいます。聞くのも大変ですよね。また、一方では、忙しさを理由についつい聞いている振りをしたりなんて・・・私も子の親、親になるのも大変ですよね。(反省)

<楕円形園舎の誕生の秘話>
 実は最近、FM放送2局(FMたちかわ、レインボータウンFM)に出演させて頂きました。両局とも生放送で交通情報やCMも入りながらの放送でした。スタッフに言われるがまま、ラジオブースとやらに入り、ヘッドホンをつけ、マイクの前にスタンバイ、一応、流れの台本らしきものはあるぐらいです。ほとんどアドリブの世界です。初めてでどうしていいものか?と思っていたら、DJのリードのもと、話題を振ってもらい会話は順調に進み、一秒の違いもなく、予定時刻内に無事終了することが出来ました。話題の振りと時間配分はさすがプロと感じる仕事でした。
 ふじようちえんの教育のこと、楕円形園舎のこと、子どもが育つことについて等々お話をさせて頂きました。特に、ふじようちえんは、なんで楕円形をしているんですか?と言う質問を両局で受けましたので、ここで改めてお伝えします。
 
 もともと前園舎は、コの字型の形でした。私、園長の活動の一つに各教室を見て回ることがあります。子どもたちの様子を常に見ていたいと言う気持ちで、保育の邪魔にならない程度に各お部屋に入り、子どもたちと話をしている(かまっている)のです。絵を描いているお友だちに『すごい!!上手!!』とか、いっぱいきれいな石を見つけたお友だちには、『やったぁ~、お母さんに見せてびっくりさせちゃおうか!!』とか・・・純粋な心で感じたことを伝えています。
帰りのお迎えにきたお母さんに『今日、園長先生に○○ほめられちゃった!!』と伝えている子どもの声を耳にし、その子どもの満足げな表情を見て、改めて私の役割の一つは、“子どもへの言葉のふりかけ”をかけることだと思ったのです。『やったぁ!! すごい!! 上手!! 園長先生もほしいな!! これ園長先生も大好き!!』『おいしそう、先生も食べたいな!!』の言葉が、ふりかけの中味です。
 ふりかけはともかく、本題の園舎の形に戻ると、以前の園舎は、コの字型のため、端まで行くとまた戻らなくてはなりませんでした。端から反対側の端までついつい面倒くさくなり、よく地面をスリッパのまま歩いていました。子どもたちに『あっ、先生いけないんだ!!』と言われれば、『大人は、いいんだ!!』なんて勝手なことを言いながら各お部屋を回っていました。
 設計時、手塚先生に、『建築のことはよくわからないけど、もし今のような形になるんだったら、ここに渡り板みたいなもの置いたらどうでしょう?』なんて言ったのを憶えています。手塚先生が、私の動きを観察し、その活動がスムーズに出来るように考えました。まさか、それが手書きの楕円になるなんて・・・。これが、楕円形園舎の誕生した訳です。最初から、楕円形ありきの設計ではないのです。私の日常の動き、子どもたちと触れ合う日常が形になっただけなのです。もっと言えば、子どもたちの育ちが私に興味を抱かせ、子どもと“素”(す)でかかわることをしていたことが、この形を導き出したのです。
 すべては、子どもから始まっています。そんな訳で、園舎の形は、子どもとのコミュニュケーションの形なのでした。  

園長だより vol. 74 (2009.11.6)