ふじようちえん

園長だより vol . 225 (2020.9.30)

2020年09月30日 / 園長だより

藤幼稚園のご父母のみなさまへ

秋晴れの青く澄んだ空が広がり、さわやかな風も流れて、心地良い季節になりました。園庭には多くの赤とんぼが飛び交い、子どもたちの遊び相手になっています。虫とり網を持った子どもたちは、トンボに振り回されて、あっち行ったり、こっち行ったり…汗びっしょりになっています。以前は、こういう遊びを通じて、すばしっこくなったり、動体視力が鍛えられたりしたものです。今は、中々、無い環境ですよね。
やがて、年長さんの踊りの練習が始まりました。音楽に合わせて、手の振り、体の動き、息を合わせようと真剣に踊る年長さん、その踊りを周りから年少さんが見学しています。『カッコいいなぁ』『来年は、踊りたい‼』と言う声が聞こえたり、自然と体が動き出しているお友だちもいます。目の前で見た年長さんの踊り、年長さんみたいになりたいという“あこがれ”がそこにありました。この“あこがれ”こそが、自ら育つ力を発動させる源だと感じました。確かに、踊りは、楽しいし、みんなを結びつける力がありますね。

≪お月見≫
今年の十五夜は、10月1日と言うことで、園長席の横に昔ながらの昭和のちゃぶ台を置き、台(三宝)にのせてお団子や秋の収穫物であるサツマイモ、さといも、栗をお供えし、絵本に出てくるような一升瓶にススキをさして、月を愛でる雰囲気をつくってみました。十五夜は中秋の名月と言われています。秋の夜長、お子様と月を見てみるのもいかがでしょうか?ベランダや外のベンチで並んで、共通のものを見ての会話は、弾むと思います。例えば、恋人や誰かと2人、カフェの席に向かい合って座って話をするより、ベンチや川の土手に並んで座り、例えば、魚がジャンプするのを同時に見て、『あっ、飛んだ‼』なんて言っている方が、心と心が近づき、話が弾むものです。お子様と一緒に月を見ながら、うさぎさんのこと、かぐや姫や宇宙のこと…いろいろなお話や物語を想像し合うのもいいと思います。現代は、うどんやバーガーにその座を明け渡してしまったようなお月見の立場ですが、昔からあるお月見を楽しんでみてはいかがでしょうかね。

≪屋根の上でリレーの練習≫
まもなく運動会、先日、あるクラスが、屋根の上でリレーの練習をしようとしていました。クラスを2つに分けてのリレー競争です。先頭の○○ちゃんが、負けたら嫌だとスタート地点につかない・・・先生がお話して、なんとか並んでスタートしたら・・・○○ちゃん、走る姿勢はいいし、速いのです。一周回ってバトンを次の人に渡し、そこで『○○ちゃん、すごくいい姿勢でカッコ良かったよ、速かったし』と言うと、自信に溢れた笑顔を見せてくれました。褒めて育つ、と言いますが、構わず褒めてやればいいものではなく、褒められたいポイントは、子ども自身が一番わかっているのです。そのポイントを私たち大人が見つけられるかどうか?が大切ですね。これが難しいのですが、様子をよく観て、その心に思いを馳せることだと思います。

≪虫でつながる心と心≫
ある2人の女の子が、園庭の地面を見つめています。私に『虫、虫‼︎』と見つけた感動で大きな声で私に伝えてくれました。見ると本当に小さな虫さんです。しばらく虫を見ながら3人で話していると、突然、小さな虫が地面の小さな穴にもぐって行ってしまいました。あれっ、突然、穴に消えてしまった虫に3人で大笑いになりました。そして、地面の穴から、虫の尻だけが出ているのを見つけ、またまた大笑いになっちゃいました‼︎
同じことを見て、面白がり、一緒に大笑いする・・・これが心のつながり、仲良しになる第一歩だと思います。でも、私自身、3,4才のお友だちと一緒に笑えることに、心から幸せを感じました。虫さん、ありがとう‼

≪今のお店屋さんごっこ≫
 ある日、外遊びの時、お店屋さんごっこをしているグループがいました。売る方と買う方の役目が出来ていて、葉っぱをお金に見立ててお買い物ごっこをしていました。そのうち、『カードで、お願いします』と言う声が聞こえてきました。えっ、葉っぱがカードにもなっているのですね。現金を使わなくなっている社会を反映して、葉っぱをカードにも見立てることも出来るんですね。子どもたちのこの対応力は、凄いなぁと感心していると、他のお友だちが『私は、ピッピッ‼』さすがに、おかあさんと一緒の行動が多いだけあって、親の行動をよく見ているらしく電子マネーでした。
コロナ禍での社会の変容は子どもの遊びの世界にまでも影響しているんだと感心しました。私たちが持っている子どもに対する既成概念も、大きな変化が必要のようですね。このコロナ禍で時代が10年早まったことを実感した、今のお店屋さんごっこでした。

≪玉入れ≫
 9月は、雨の日が続き、運動会練習も思うように出来なかった日が続きました。小さな組の先生方も、まず、玉入れ競技自体を知らないお友だちに玉入れを教えようと、お部屋の中で出来る玉入れあそびを考え、みんなで玉入れを体験してみました。○○ちゃんは、多分、その時に玉がカゴに入らなかったことが悔しかったのでしょうか?園庭で玉入れをやってみようとした時、『できないから、やらない‼』と頑固に玉入れをしないのです。先生がそばで、投げてみる動作をして誘うのですが一向に興味を示しません。やがて制限時間が来て、玉の数を数える場面になりました。先生が、『○○ちゃん、じゃぁ、一緒に玉の数を数えてくれる?』と促すと、みんなと一緒に、1,2,3…と声をあげて数え始めたのです。(本番は、声の代わりに手拍子です)生まれて初めて体験した玉入れ、入らなくてさぞ悔しかったことと思いますが、このお友だちは、玉の数を数えることから玉入れと馴染むことが出来そうです。お友だち、それぞれの性格にもよりますが、小さくてもいいから最初の体験は、小さな成功体験からがいいようです。ついつい運動会と言うと競い合ったり、団体競技的なことをイメージしがちですが、本当に大切なことは、運動会を通じて、出来ることの範囲が広がったり、お友だちと力を合わせたりすることを体験して、それぞれの更なる育ちに役立てればいい、言わば、育ちの舞台装置のようなものが運動会だと思っています。そのような点から、ふじようちえんの運動会は、子どもが育つ日常の延長線上にあるものと考えています。コロナ禍、今年の運動会は、いろいろと制約がある中、皆様にはご不便をおかけしますが、その分、『育って、楽しい運動会』をテーマに、みんなで楽しみたいと思います。どうぞ、子どもたちの育っている今をご覧いただけたら嬉しい限りです。

園長だより vol . 225 (2020.9.30)