ふじようちえん

園長だより vol . 269 (2023.11.30)

2023年11月30日 / 園長だより

藤幼稚園のご父母のみなさまへ

 各お部屋から♪あわてんぼうのサンタクロース、クリスマスまえにやってきた、いそいでリンリンリン…とても元気な歌声が聞こえてくる季節になってきました。吹く風の冷たさに冬の到来を感じる今日この頃、皆様、いかがお過ごしですか?
 最近は気温が定まらず、暑くなったり、寒くなったりで服装選びも大変ですよね。どうぞ、お風邪等ご注意ください。その昔は、寒くなると、服は厚着になり、着たり脱いだりで体温調節していましたが、最近は衣服の暖房機能が高まって、ある程度薄着でも耐えられるようになってきました。先日、私はそんなに寒くもない日なのに、そのあったかい下着を着てしまい、逆にすごく汗をかき、汗が冷えて寒くなり風邪をひきそうになりました。何事も、過ぎたるは及ばざるがごとし、季節の変わり目、小まめに気候、温度に合わせることが肝心のようですね。
 今、子どもたちは、クリスマスフェスタへ向けてそれぞれに思いを込めた作品づくりをしています。『見て、見て‼』の声が一段と大きくなる季節です。また、あるお友だちは、屋根の上を元気よく走りまわり、木登り、ダルマさんがころんだ‼等々をしながら楽しい時間を過ごしています。そして、特にこの時期、風に吹かれて落ち葉がたくさん庭に積もります。みんなでたくさんの落ち葉を集めては、落ち葉プールにせっせと運び、ふかふかの落ち葉プールをつくっています。ある程度集めると今度はその落ち葉プールにジャンプ‼枯れ葉に埋まりながらお友だちと楽しんでいます。

 また、例年ですが、この時期に園庭を耕し、芝の種を蒔き、土をかぶせて芽が出てくるのをじっと待つ、緑の園庭づくりが始まっています。幸いにも最近の温かさも手伝ってか?順調に芝の小さな芽がたくさん出て来ました。毎朝、この小さな芽に顔を近づけ成長を見ているお友だちがいます。実は、そのお友だちの輝いている目を見ていると、それこそ、眩しいばかりの育ちの芽を感じます。みんなよく育ってますね‼

さらに、育ったと言えば、スマイルファームの大根と脱穀精米したお米です。欧米のクリスマスシーンとは一変して、日本の昔を思い出させるような、自分でおむすびを握って食べ、大根をテラスや正門近くの軒に吊るして干してます。こんな欧米と日本文化の融合した状態を体験できるのも、ふじようちえんならではのものと思っています。詳しくは、各クラスのドキュメンテーションでご覧ください。

≪遠くで呼び合うコミュニケーションで、育つ‼≫

 先日、園見学でお越しになったある園長先生が言われた言葉で、とても新鮮で記憶に残っていることがあります。それは、子どもたちが屋根の上で、園庭を挟んで大きな声でやり取りしている光景を見た時でした『本当にいいですね、遠くを見て、お友だちを見つけて、呼び合うことが出来るなんて。園庭の狭いうちでは、近くのお友だちと話をすることばかりで…ふじようちえんさんにとっては、何げないことのようですが、こんな体験をできることが羨ましいです』とおっしゃっていただきました。大きな声でお友だちを呼んだり、遠くから先生にご挨拶したり…自分の意志をはっきりと伝えなくては成り立たないコミュニケーションの場にもなっているのがふじようちえんの特徴の一つでもあるんだなぁと再認識しました。私どもは当たり前の光景ですが、こういうことを経験できない環境で育つお友だちもいるんだと気づいた瞬間でした。どっちがいい、わるいではなく、改めて、様々な大人や友だちとのやり取りを通じて、子どもたちはコミュニケーション能力を育んでいるんだと勉強になったお客様との時間でした。

≪あそびがまなび、まなびがあそび、おもしろがる力で子どもは育つ‼≫

 以前、お話しさせていただきましたが、大切な観点ですので再度お伝えいたします。『あそびってなんですか?そんなに大切なんですか?』の質問に、私もZOOM対談させていただいたことがあり、尊敬している東大名誉教授の汐見先生が答えています。
 汐見先生曰く、『日本語の“あそび”という言葉が誤解を与えているようです。あそび=PLAY 英語のPLAYの方が何か意味するところの裾野が広いような気がします。PLAYピアノ、PLAYバイオリン、演奏するのも劇を演じるのもPLAY 、つまり、生まれた世界でその子らしい何かを表現することすべてPLAYと言っています。日本では、“あそび”が“まじめ”に比べて低いものというニュアンスがあり、まじめの反対のものとして捉えられています。でも、今、あそびが持っている人間を育てていく価値が世界的に注目されているのです。』
 昔は、神社の境内や、雑木林、道端等々で遊んだりしました。あそび道具があるわけじゃないですから、全部自前、つまり、毎日毎日が創作活動でした。地域の中、群れで育っていた時代は、そういうことが当たり前のようにあったのです。社会性、知恵、スキル、失敗から学ぶことも、乗り越える力や達成感もみんなあそびの中で身に付けていったのです。その力が、学校だけでなく、生きていく中で大事な基礎力でした。いろいろなことをあそびの中で学んだのですが、今、そういうあそびがほとんど出来なくなりました。そこで、現在、改めて、あそびが持っていた人間形成上の価値を自覚し直そうとしています。だから、園でも、ご家庭でも基本的には「育ちのベースはあそびなんです」と言っています。どれだけ、豊かにおもしろくあそべるか?どれだけ個性的にあそべるか?そのあそびの中でどれだけ考えたり、工夫したりしているか?そのあそびの豊かさがその子の人生をつくって行くんだ‼というぐらい、あそびというものに注目してほしいと思っています。
 ある人は『えっ、勉強はしないんですか?』と言われますが、『あそびが一番大切な勉強の場なんですよ‼』と伝えます。子どもがあそびの中で、一番考えたり、工夫したりしますからね。させられて何か出来たとしても、脳の中で『あれやってみたい‼』『おもしろい‼』という部分が働いていませんから、出来ても脳との結びつきは希薄です。でも、あそびは『こういうものをやりたい‼』『カッコイイものを作ろう‼』と思ってワクワク、ドキドキしながらやるから、出来た時の達成感は強く、脳に深く刻み込まれて、簡単には忘れないのです。そういう点から、あそびの持っている教育的価値が大事になってきている時代だと認識してもらいたいです。
 あそびを定義すれば、子どもが親からもらった命、この命とは生きるエネルギーみたいなものですが、その命をどう輝かせていけば、自分らしく生きることが出来るのか…を探求する活動が“あそび”なのです。
 汐見先生の言葉を振り返ってみると、確かに幼い時に教えられたことよりも、あそぶ中、自分でつかんだ法則やルールの方が身に付いているというか、忘れてない…すべて、自分がやりたくてやった遊びの中からつかんだものだったりして…。さらに、『あそびがまなび』のまん中にあるものは…“おもしろがる力”だと思っています。
“おもしろがる力”大人も、子どもも、大切ですね。あそびの中にこそ未来があります。

園長だより vol . 269 (2023.11.30)