2013年4月30日 園長だより
2013年04月30日 / 園長だより藤幼稚園のご父母のみなさまへ
♪やねよりたかいこいのぼり、おおきいまごいはおとうさん…子どもたちの元気な歌声が聞こえています。園庭の旗竿には、澄みきった青空を背景に大きな鯉のぼりが気持ちよさそうに泳いでいます。
今日、幼稚園では、鎧兜の五月人形の前で写真撮影をし、柏餅を食べて、みんなが元気に育ちますようにと願いを込めて端午の節句を祝いました。
さわやかな季節になりました。皆様、いかがお過ごしでしょうか?
ご家族でいろいろな所にお出かけになる連休、どうぞお気をつけて楽しんで下さい。
≪背くらべ(せいくらべ)と柏餅≫
私は、この季節、“せいくらべ(♪柱の傷はおととしの…)”や“茶摘み(♪夏も近づく八十八夜)”、“こいのぼり(♪いらかの波と雲の波…)”という童謡を思い出します。特に、せいくらべに出てくる“柱の傷”というフレーズに、子どもの頃、兄弟で家の柱に背中を付け、柱に傷をつけ、背を測ったこと、何回も何回もボールペンで線を書き、どの線が自分の背か?分からなくなったことなどを思い出しました。おそらく…同じような思い出をお持ちの方も多いのではないでしょうか?ところが、この歌、先生たちに聞いてみたら『知らない、初めて聞いた』という返事、意外にも多いのです。年代の差でしょうか? 学校で教わらなかったということです。確かに、住宅事情も変化し、工法で柱の無い構造だったり、大切な家の柱に傷は付けたくないし、身長はいつでも身長計で測れるし、しかもデジタルで正確だし…という社会環境・生活の変化に伴い歌われなくなったのでしょうか? 現在の状況からすると間違いではないのですが、何か寂しさを感じます。端午の節句、5月5日に家族で子どもの成長を柱の傷で確認し、喜び合う習わしの一つだと思っていました。
最新の身長計には、子ども同志、目見当で“くらべっこ”して、どっちの方が大きいとか言い合うコミュニュケーション機能が付いてないのです。人と人のこんなやり取りこそ大事なものと思います。
それに比べて、柏餅は進化していました。まさしく、柏餅自ら消費者の生活に合わそうとしているかのようです。先日スーパーで、一口サイズの柏餅4個入りのもの、いろいろな味の“あん”が入っているものを販売していました。食べやすく、様々な味も楽しめ、家族で分けられるし、大きさも数も丁度いいと言うところでしょうか? これもまた間違いではないのですが、日本の行事が商業化?されている一例だと感じてしまいました。昔に帰れ、とまでは言いませんし、また、どの辺の昔まで帰るのがいいとも言えませんが、行事の意味やそれに伴う食べ物の“いわれ”を知るとおもしろく、興味がわき、より一層感慨深い味になるのではないでしょうか?
行事や食べ物から、日本の文化や歴史を知ることは、本当に発見が多いものです。
そもそも柏餅を食べる風習は日本独自のもの。柏は新芽が出るまで古い葉が落ちないことから「家系が絶えない」縁起物として広まったもののようです。時代が違うとは言え、こんな話でもしながらみんなで柏餅を食べて、日本文化や家のことを子どもたちに伝えてもらえればいいと思います。ちなみに、柏餅、粒あん、こしあん、みそあん等々、皆さんはどれがお好きですが?実は私、全部❤好きな隠れ柏餅ファンです!!
≪家庭が幼稚園、幼稚園が家庭≫
毎朝、先生たちが順番で正門やバス門に立ち「おはようございます!!」とあいさつをして子どもたちを迎え入れています。あいさつを交わした瞬間、子どもたちの顔色や雰囲気を感じて、その日の健康や気分を把握する場にもなっています。
みんな元気にあいさつをしてくれて、クラスへと行きます。この光景を見ながら、つくづく、あいさつは幼稚園で教わるものではなく、各ご家庭で教わったことの発表、幼いころから親に言われてきたからこそ出来るものなのだと感じました。多分、自分からあいさつするお友だちは、ご家庭でもいつもあいさつをしているのでしょう。ということは、ご家庭があいさつをする文化、もっと言えば、ご夫婦があいさつをしている姿をみて、子どもたちは育って来たということなのですね。先生たちは、みんなで『大人が手本』という意識で子どもたちに接しています。私たち大人の言動が子どもに伝わりますので、責任重大です。
また、家で行っていることとは逆に、幼稚園で意識的に行っていることで、履物を揃えたり、手洗い、うがい、服をたたんだり、食器を片づけたりすることを子どもたちは、ご家庭でもやっているでしょうか? 幼稚園では出来ていることも、ご家庭では…ということは無いでしょうか? 人の顔色を見てその場だけのいい子になったり、大人を安心させる子にはならないでほしいですね。場所がちがっても、ご家庭と幼稚園で、同じ行動が出来るように成長してほしいと願っています。そんな点からも、ご家庭と幼稚園は表裏一体と思いますし、双方が力を合わせて子どもの手本となり、子どもの成長に役立つようにして行きたいものです。
正門の園長あいさつは、私の実感、経験、反省を含めてお伝えしています。その中に
『子どもって、親の言うことは聞かないけれど、することはマネしますね』というものがあります。この親を先生に置き換えても成り立ちます。親になるのも修行ですね。
≪遊びで育ち、遊びで学ぶ≫
一般的に日本では、保育所は保育を、幼稚園は教育をするものと考えられています。しかし、最新の脳科学研究では、脳の臨界期、つまり活発に物事を吸収する時期は4才より前と言われています。0から6才まで脳を含めて継続的にいろいろなものが出来上がる人間形成の土台づくりの時期に、教育は3才からと考えられている一般的な概念は本当にもったいない話だと思います。また、脳は、0才から学ぶことを欲しているとも言われます。この点からは、今後、幼稚園でも脳科学を専門的に勉強する必要があります。が、ここでお伝えしたいのは、「だから、幼児教育が大切です」とか言うことではありません。幼児教育の大切さは理解して頂いているのですが、「幼児教育が大切です」と言うと単に「漢字を覚えさせる」とか「算数のドリルを始める」ということになってしまい、思わぬ方向に話が展開してしまうのです。確かに詰め込み式は、即時的効果はあるとは思いますが、そのような「詰め込み」の効果は、小学校低学年で消えてしまうという調査結果も出ているのです。
本当にこの時期で大切なことは、「遊び」なのです。「遊び」こそ、自主的な活動そのものであって、「自ら育つ力」の発揮だと考えます。そして、子どもたちは、実感を伴った遊びの中から、様々なことを吸収し学び、お友だちとのやり取りを通して友だち関係等々を体験しながら成長していくものです。遊びで育ち、遊びで学ぶ、遊びは学びの土台です。やがて、子どもたちは具体的な実物や教具での興味理解から、本や文字等の抽象的なものへの興味理解へと成長し、より高度な学びを欲して行きます。
子どもたちの今、何が育っているか?見えないものを見る力を鍛えたいと思います。
園長だより VOL.123 (2013.4.30)