ふじようちえん

2015年7月17日 1学期終業式 園長だより

2015年07月17日 / 園長だより

藤幼稚園のご父母のみなさまへ

 暑い、暑い夏の日がやって来ました。先日のお誕生日会、子どもたちは、スマイルファームで収穫したてのとうもろこしの皮むきをしました。一枚一枚皮をむき、やがて顔を出す、ぎっしり詰まった黄色の粒々・・・茹でて、みんなで食べてみました。とびきり新鮮で、おいしい体験、きっと子どもたちの体と心に記憶されたことでしょう。
 また、園長席の前には、カブトムシ、ノコギリクワガタ、コクワガタ、玉虫、カミキリムシ・・・夏の主役が増えてきました。甘い餌にカブトムシやクワガタが集まり、カブトムシ、クワガタに子どもたちが集まる・・・昔から変わらない夏の光景が展開されています。そして、おそらく、その子どもたちに親が振り回されている構図なのかも?知れません。カブトムシ、ケースだ、エサだと振り回され・・・家族の夏は過ぎて行く!! いよいよ夏休み、ご家族でたくさんの楽しい思い出が出来ますように・・・。

 本日、終業式を行い一学期が終了致しました。春から夏に、子どもたちはそれぞれに成長し、いろんなことが分かるようになったり、出来るようになったり、親と離れて集団で過ごす時間を通じて、ちょっぴり!?おにいさん、おねえさんになったものと思います。ご家族様には、引き渡し訓練に始まり、遠足や家族参観日、七夕まつり等々に、ご理解ご協力を頂き、ありがとうございました。心より感謝申し上げます。

≪子どもが育つ、夏休みを!!≫
 終業式では、夏休みに守ることとして“あいさつ、お返事、お手伝い”の3つを話しました。最近、“最初の5年間が後の80年間を決めてしまう”と言われています。その子の人生の始まり、基礎の時期に様々な五感を発達させ、正しい“くせづけ”をすることが特に大切になってきています。“習慣こそ、第二の性格である”という言葉があるくらい正しい生活のくせづけは人生を創ります。
 幼稚園生活の中には“生活のくせづけ活動”がたくさんあります。例えば、トイレ等で脱いだ靴を外に向けてそろえること。歩いて来た方に向けてかかとをそろえて靴を置く・・・すると、次に履く時、とてもスムーズですよね。スムーズと言うことは、無駄が無く効率的で、生産性が高く、とても合理的な行為となります。いわゆる躾という行為は、とても合理的で美しい動作を昔から伝えてきたものなのです。そして、美しい動作は、周辺の人を気持ち良くし幸せにする元なのです。
 さらに、私たちは、幼児期に見られる育ちの特徴として、例えば、砂場でいくつかの小石を大きい順に並べるとか白い石だけ集めてみるとか・・・何気なく見る光景、このような他愛もない様々な遊び中に実はしっかりと育っているものがあるのです。その育っているものとは、“秩序感”なのです。子どもたちの心に芽生えてきたこの秩序感は、足形テンプレートの枠にスリッパを重ねて置きたくなり、少しのずれも許さずにしっかりと置くのです。ちょっとでもずれていると気持ちが悪いのか細かく調整し、足形テンプレートにスリッパをぴったりと置きます。置き終わると子どもたちは自分の行為に、少しのホッとした気分、置けた達成感、きちんと出来た満足感を感じるのです。この満足感こそが、『ぼくは、出来る!!』『私は出来た!!』という“自信”につながって行きます。やがて、たくさんの自信が積もって行き、自立して行くのです。子どもは、時期が来ると自立すると思いがちですが、自立を因数分解するとこんな中味があるのです。
 子ども自ら靴をそろえている姿(モンテッソーリ教育の秩序感の芽生えに根差した活動)を目にする度に、その子の成長が感じられ、心からうれしくなります。
 私は子どもたちに『幼稚園が家で、家が幼稚園だ!!』と言っています。幼稚園で、はきものをそろえていても、お家や親せきの家で、出来なければまったく意味が無いと思っています。
 夏休みの3つのお約束『あいさつ、お返事、お手伝い』や『はきものをそろえる』ことは、本当に当たり前のことのようですが、この当たり前のことが人生にはとても大切です。当たり前のことを当たり前じゃないレベルまですることで、やがて大きな力を発揮し、すごいことが起こると聞いたことがあります。
 どうぞ、子どもが育つ夏休みを!! ご家族で楽しんで下さい。

≪なんとかなる病≫
 幼稚園児には、ほとんど関係ないと思いますが、今後のために一言お伝えします。私の子どもの頃の夏休み、楽しい思い出がたくさんあります。ただ、一つだけ苦い思い出と言えば、なんといっても夏休みの宿題でした。友だちと遊ぶことに夢中で宿題を後回しにして、気が付いたらもうすぐ二学期、最後の3日間に追い込みをかけた・・・なんて苦い思い出があります。同じ思い出の方もいるのではないでしょうか?
 よく考えると、今も同じようなことをしている自分がいることに気づきました。提出書類等々、やるべきことが近づいて来ると苦しくなります。何でもっと早く始めなかったのか?毎日少しずつやっていれば・・・後悔先に立たず、自己嫌悪に陥ります。
 なぜ、出来ないのでしょうか?それは、“なんとかなる病”に冒されているからだと教えてもらいました。確かに、思い起こせば、計画なしで仕事をしていても、期限ギリギリでなんとかしてしまった経験があります。また、自分はギリギリにならないと力が発揮できないタイプ、なんて言ってました。これらはみんな“なんとかなる病”になっているのだそうです。
 夏休みの宿題ではなんとかなっても、社会では許してくれません。追い込まれれば、楽しい人生も苦しくなります。人生を楽しみたい人は、“なんとかなる病”を克服する必要があるとのこと。まずは計画を立てて、準備の積み重ねを怠らないようにしましょう!!と言われても、まだ、まだ、平気!! なんとかなると思っている私は重病かも知れませんね。皆さんは、いかがでしょうか?重病じゃないですよね。

≪チューペットとラムネ≫
 夏の暑い日、突然思いました。チューペットという子どもたちがチューチュー吸って食べるアイスキャンディーと瓶入りのラムネに共通点があることに気付きました。チューチュー吸いながら少しずつ食べるチューペットと瓶の中のビー玉をビン内側のくぼみに留まらせながら少しずつ飲むラムネは、どちらも中々出ないところが同じです。また、そこに美味しさや楽しさが潜んでいるということなんですね。言わば、限られたものを少しずつ味わうことで、子どものモノを大切にする心とか、いとおしさを育むことに役立っているような気がします。
 豊かな社会、ネット等々で何でも簡単に手にすることが出来ますが、それがはたして本当の“豊かさ”なのか?考えてしまいました。その昔、中学校の部活の帰り道、1つのコロッケを友だち3人で分け合って食べた時の美味しさは、忘れられません。今のコロッケの方が味的には比べ物にならないくらい美味しいと思いますが、何故か?あの時のコロッケの方がはるかに美味しかったような気がします。本当の豊かさに触れていた時代だったのかも・・・。食べ物だけではなく、モノや時間についても同じようなことが言えると思います。
 本当に豊かなもの、豊かな時間を子どもたち、ご家庭の皆様方と共に感じていきたいと思っています。

平成27年度 1学期終業式 園長だより vol . 154(2015.7.17)