ふじようちえん

2011.10月31日 園長だより

2011年10月31日 / 園長だより

藤幼稚園のご父母のみなさまへ

 朝夕の空気にも冷たさを感じるようになった今日この頃、園庭の木々も少しずつ色づきはじめ、秋の深まりを感じます。
 皆様、いかがお過ごしですか? 季節の変わり目、お体ご自愛下さい。

 運動会やサツマイモ掘りにと、ご父母の皆様にご協力を頂きまして、無事終了することが出来ました。心より感謝申し上げます。ありがとうございました。特に、サツマイモのつる刈りには、急な連絡にもかかわらず、多くのお母様方にお手伝い頂き、本当に助かりました。からみつく“つる”と格闘し、汗もかくし…軽い筋肉通になった方もいらしたのではないでしょうか? つる刈りは慣れない作業で大変でしたが、翌日、サツマイモを見つけた時の子どもたちの嬉しそうな顔、土の中からサツマイモを掘り出した時の輝く瞳、そして、サツマイモを掘っている割に(?!)土だらけの顔…に出会ったら、前日の疲れもどこかに飛んで行ってしまいました。
今しか体験できないことをしっかりと体験できた子どもたちの育ちの光景でした。
 今年のサツマイモは、大きく、甘く、ホクホクしてとても良く育ちました。焼きいも、天ぷら、スィートポテト…ご家族で楽しんで頂けたら嬉しいです。

≪森のようちえんで感じたこと≫
 先日、友人の誘いで鳥取県の山間部、智頭町にある「まるたんぼう」という“森のようちえん”に行って来ました。幼稚園とは言っても、地域の子育てお母さんたちが集まりNPO法人として町にご援助して頂きながら運営されている、園舎、日課、遊具を持たない幼稚園なのです。
 子どもたちは暑い夏も寒い冬も豊かな森の中で感性を働かせながら遊びを作りだし、子どもの世界を心ゆくまでゆっくりとくりひろげています。大人はそんな子どもたちを温かく見守る“観察者”なのです。余計な手出しをなるべくせず、どんな時も子どもたちに考えさせる事で、自分で考え判断できる子どもに育てようとしています。

 訪問したのは、たまたま雨の日。朝、8:30ごろに町の造り酒屋跡地に約20人の子どもたちが親の車に乗って集まって来ます。みんな、上下雨具(子どもでも本格的なアウトドア用のもの)を着て、着替えとお弁当をリュックに入れ、長靴を履いています。いつも長靴を履いているそうです。その意味は、山の中で蛇に噛まれても長靴の方が防ぎ易いからだそうです。ちなみに、外で行う4月の入園式では、お祝いに、山で迷子ならないようにと『クマよけの鈴』がプレゼントされます。一個包装のカリカリ梅ぐらいの大きさの鈴が3つ繋がっている物です。
 そうこうしているとみんなが集まり、ガヤガヤしている子どもたちに先生が、『今日、どこ行くか決まったの?』と話しかけました。この町には、日本10大林業地の一つに挙げられるほど広大な森があり、その中に現在13か所の拠点(山、滝、渓流、牧場、山登り等々の遊びステージ)が存在し、毎日どこに行くかは、子どもたちが決めるとのことです。そんなこと子どもが決められるのかな?と思って見ていました。確かに、子どもたちの中で、多くの意見が出ています。例えば、Aちゃんは、渓流へ、Bちゃんは山登りへ、Cちゃんは牧場へ…という具合です。こんな時どうするのかな?と見ていたら、何人かの代表するリーダーらしき?子ども同士の話し合いが始まりました。聞いていると、だんだん決まってくるのが分かりました。結局、Aちゃんが『今日は、渓流に行くけど、この次は、BちゃんやCちゃんの言っているところに行くんでイイよね!!』と言う意見にそれぞれ納得し、この日は渓流場所へ行くことになりました。
 このように子どもたちの話し合いで決めると言う民主主義が成り立っているのです。ここを見学する事前説明で言われた大人の約束があります。『お口はチャック、手は後ろ、でも耳はダンボで聞いて下さい』と言う“子どもを見守る3原則”でした。
これは同時に子どもの自主性を伸ばす3原則でもあると思いました。また、ここでは言ってはいけない言葉があります。それは、『あぶない、きたない、ダメ、早く』です。確かにこの言葉は、親の都合、大人の都合で言っている言葉なのですよね。

 私も子どもたちと山を歩いてみました。山を歩けば、行く先々で、虫やクモ、沢ガニ、みょうがを採って教えてくれるし、落ちている栗を拾おうとすると、そこよりこっちの方が美味しいよと言って長靴を使い器用にイガを取ってくれたり、のどが乾いたら沢から落ちてくる水を汲んでくれるのです。こんな調子ですから、先生も余計な気づかいはしません。よく言う『トイレ大丈夫?』とは、誰も言いません。したくなったら、大丈夫そうな所へ自ら行き、必要ならばスコップで穴を掘って用をたすのです。服がぬれたら、リュックから着替えを出し、雨に濡れないところで一人で着替えるのです。実際、3才の女の子が約50分かかったけれど、全部自分でやっているのを見てビックリしました。やればできるんですね。
『子どもたちが本当に困った時は、どうするんですか?』と質問したら、『ここでは、子どもたちが本当に困っている時は、子ども同士が助け合って行きますよ』と答えて頂きました。

 様々な点から、現在の子育て、子育ち、教育、その環境等々に至るまで考えさせられることが多い研修でした。確かに、ふじようちえんと立地する環境は大分違いますが、共通することも多くあると感じました。特に“先生が中心ではないのがいい”ことや“子どもが育つところ”と言う幼稚園の意識、立ち位置が同じで何かうれしくなりました。
 私自身、鳥取県の山奥まで行くのは正直、ちょっと大変だなと思っていましたが、この森のようちえん“まるたんぼう”に行ってみて、保育の原点、子どもが育つことの本当の中味、先生の子どもに対する姿勢、私たち大人の役割等々まで、今一度見つめる機会になりました。そして、常に心がけることとして大切にしたいと思いました。
 今回は、森のようちえんのほんの一部分ですが、皆様の子育て・教育のご参考になれたらと言う思いでお伝えさせて頂きました。

園長だより  vol . 101 (2011.10.31)