ふじようちえん

園長だより vol . 235 (2021.5.31)

2021年05月31日 / 園長だより

藤幼稚園のご父母のみなさまへ

6月を迎え、梅雨の季節がやってきました。うっとうしい季節ですが、気持ちだけは爽やかに過ごしたいものですね。確かに適度な降雨がなければ、お米や野菜は出来ず、食糧危機にも繋がってしまいますからね。適度な雨…が大事ですね。    
その昔、私は全国から集まった約1000人の若者が研修しながら香港に行く研修船に参加したことがあります。台湾近くの洋上で大しけに遭遇し、船は揺れ、多くの人が船酔いをしました。その時、乗船していたゲスト講師の永六輔氏(上を向いて歩こう作詞等々、多才な方)が、船内放送で『みんな、今、船が揺れて辛いけど、海にいる魚にとっては、この大しけで、海の中がかき混ぜられ、プランクトンがより多く運ばれてきて、食べ物が豊富になっています。だから、魚のことを考えたら、この大しけで魚たちは喜んでいるんだと思って、もう少し頑張って下さい‼』と言われました。その放送後、何故か、船の揺れよりも、魚に取っていいことなんだ‼という意識が優先したのか?不思議と船内は静かな雰囲気になり、揺れていることを言葉にする者はいなくなったのを思い出しました。遠い昔の話でごめんなさい。お伝えしたいのは、“ものは考えよう”次第、“梅雨も考えよう”次第と言うことでした。

≪続いても雨、雨で育つ‼ 科学する心≫
先日の雨の日、あるお友だちが、水たまりをじっと見つめていました。そして『キラキラして宝石みたい‼』『おもしろいのができてるよ‼』と教えてくれました。
見ると、雨粒が水たまりに落ちてできる半円形の小さなドーム形の雨の泡、それによってできるいくつもの波紋を見つめているのです。私たち大人が、飽きずにじっとたき火の炎を見つめている時に似ています。
子どもたちの何かを見て、驚きや発見、不思議だなぁと思う心が、理解に繋がり、やがてもっと興味は拡がって…この場合、例えば気象関連に興味が繋がってくこともあるかもしれません。何かを見つめている子どもの時間、大切にしたいですね。多分、あの時、お友だちの科学する心の芽生えがあったものだと思いました。
このように、私たち大人が何げなく過ごす日常の中に、子どもたちの科学する心がいっぱい潜んでいるのです。
雨の泡とは異なりますが、水の泡と言う表現があります。昔から比喩的に、儚く消え去っていくもの、努力が無駄になることなどを水の泡になると言いますが、雨の泡からもその意味が感じられ、儚いものへの例えがよく理解でき、水の泡に例えた日本人の感性に感心するばかりです。多分、昔も水たまりを見つめていた人がいて、儚く消え行く雨の泡に、何かが努力の甲斐もなく終わったことと虚しさを重ねて表現した人がいたものと思います。やはり、日本人の感性や表現の底流には、自然を見て、感じた、驚きや発見、情緒があると感じました。
そんな意味も込めて、正門に掲げている今月の園長あいさつのボードに描きました。
『雨つぶ、長靴、水たまり、アジサイ、雨傘、雨ガエル、梅雨に育つ、子どもたち‼』
梅雨を味方に、子どもが育つ、梅雨‼になるように、プラス思考で頑張ります‼

≪泥場、砂場、水場、草場、木場、空場で育つ‼≫
幼稚園では、そろそろアジサイが咲き始めます。それに合わせるようにてんとう虫ダンゴ虫も出始め、子どもたちの興味は増すばかりです。先日も、ヤモリをお友だちが捕まえ、切れたしっぽが動いていることに驚いたり、珍しいミヤマカワトンボがお部屋の戸にとまっていて、子どもたちは大興奮していました。また、カブトムシの幼虫もご家庭から頂き、子どもたちはその成長を毎日見ては楽しんでいます。
ふじようちえんは、“子どもが育つところ”とお伝えしていますが、様々な虫たちに加えて、様々な草や木々、花や作物、ポニーのはるちゃんはじめ、かわいい動物たち、そして、私ども教職員…あらゆる環境が、子どもの育つ道具と捉えています。
特に、楕円形園舎の外側も楽しく遊べる環境として、また、子どもたちが手で触れることが出来る原体験の場所として、その素材感を大切にエリア分けもしています。
泥団子づくりができる西側園庭の泥場、きれいな石探しやお山づくりができる砂場、井戸水を汲んだり、水で遊べる水場、みんなが走り回っている園庭は草場、そして、屋根の上を板の感触にふれる木場と言うふうに設定しています。あと、こじ付けかもしれませんが、テラス屋上の周囲を見渡せる気持ちよさを体験できる空場とでも言うのでしょうか?気持ちが大きくなって、大きな夢をたくさん持てそうな空気感があります。どんな場でも、子どもたちには思いっきり遊んでほしいし、その夢中で遊び込んだ経験の中にこそ、本人しかわからない何かをつかんでいくものと思っています。
幼児期、見て、触れて、感じて、考えて、行動する。このサイクルをどの場でも、何でもいいから自分でつくってくれたらうれしいですね。教育保育の大事な心得として、“体験は教えられない”“体験に勝る学びなし”と言うところですね。

≪ルンルンで育つ、子どもたち‼≫
長時間保育の新名称につきまして、多くの皆様からのたくさんのご提案を頂き、誠にありがとうございました。先日お伝えしたように、素敵で貴重な多くのご提案を基に検討した結果、“ルンルン”と決定しました。どうぞよろしくお願い致します。
以下、プロジェクトXメンバーと様々な意見を交わして検討した内容をお伝えします。
ともすると、今までの長時間保育のイメージは、共働きで子どもが帰宅しても面倒を見てあげられないとか、長時間と言うイメージから一人ポツンと残っているというような寂しい姿を思い浮かばせるとか、預かりと称すると何か?宅配の荷物のような印象を与えかねないもの等々、ネガティブな思考の延長線上にあったような気がします。今回、今までのそんな視点を少しずらして考えてみました。加えて、今後、さらに女性活躍の時代になると想定し、何が大切かを考えました。すると、『お子様を預かることイコール“家族応援”をさせて頂くこと』と言う結論に至りました。あわせて、ある朝、ある年少組の女の子が『今日、長時間で5時にお迎え』という小さく、寂しげに私に言って来るのです。そんな一言を聞いてしまうと、何とかして長時間と言うネガティブな音を明るく楽しい音にしてみたいとも考えました。そんな点からも明るく、楽しくなるような表現で、ルンルン‼に決めました。キャッチとして、
“遊んで、学んで、子どもが育つ‼ ふじようちえんの家族応援企画『ルンルン』
ルンルンは、はずむ心を表現し、先日お話したオノマトペ(カレーにお肉がゴロゴロ入っている。とか、おそばがツルツル等々の擬音語・擬態語)を活用して楽しく、言っただけで心が明るくなるものにしました。ルンルンでご家族応援させて頂きます‼ 

園長だより vol . 235 (2021.5.31)