ふじようちえん

2026年度 1学期終業式 園長だより vol . 306 (2026.7.17)

2026年07月17日 / 園長だより

藤幼稚園のご父母のみなさまへ

 今年もいよいよ暑い、暑い、夏の日がやって参りました。先日のおたんじょうび会では、子どもたちみんなでスマイルファーム産の“朝採れとうもろこし”の皮むきをしました。一枚一枚皮をむき、やがて顔を出す、ぎっしり詰まった黄色の粒々・・・茹でて、みんなで食べました。とびきり新鮮で、甘くて、おいしい体験、きっと子どもたちの体と心に記憶されたことと思います。

 今、園長席前には、夏野菜をはじめ、カブトムシ、クワガタ、玉虫、メダカ、サワガニ・・・夏の主役が並んでいます。甘い餌にカブトムシやクワガタが集まり、カブトムシ、クワガタを見るために子どもたちが集まる・・・昔から続いているこの時期の光景です。そして、おそらく、その子どもたちに親が振り回されている光景を想像することができます。
“カブトムシ、ケースだ‼︎エサだ‼︎と大騒ぎ・・・家族の夏は過ぎて行く!!” いろいろありますが、待ちに待った夏休み、ご家族でたくさんの楽しい思い出をつくってくださいね。

≪子どもが育つ、夏休みを!!≫
 本日、終業式を行い一学期が終了致しました。春から夏に、子どもたちはそれぞれに成長し、いろんなことがわかったり、出来るようになったり…親と離れて集団で過ごす時間を体験して、それぞれにおにいさん、おねえさんになりました。ご家族様には、引き渡し訓練に始まり、遠足や家族参観日、七夕まつり等々に、ご理解ご協力をいただき、心より感謝申し上げます。ありがとうございました。
 終業式でお話した内容は、
①早寝、早起き、朝ごはんをしっかり食べること。(規則正しい生活で体を丈夫に!!)
②ごあいさつ、お返事をしましょう。(おはよう、こんにちは、ありがとう…、はい!!)
③お手伝いをしましょう。(子どもは親と同じこと“お仕事”をしたがります)
以上3つのお話です。

 最近、“人生、最初の5年間が後の80年間を決めてしまう”と言われています。その子の人生の始まり、土台となる時期に5感を洗練させ、正しい“くせづけ”をすることが特に大切になってきています。“習慣こそ、第二の性格である”という言葉があるくらい正しい生活のくせづけは人生を創ります。
 幼稚園生活の中にも“生活のくせづけ活動”がたくさんあります。例えば、トイレ等で脱いだ靴を外に向けてそろえること。歩いて来た方に向けてかかとをそろえて靴を置く・・・すると、次に履く時、とてもスムーズですよね。スムーズと言うことは、無駄が無く効率的で、生産性が高く、とても合理的な動作であり、美しい所作なのです。そして、美しい所作は、周辺の人を気持ち良くし、安心な空気を作り、みんなを幸せにする源なのです。
 さらに、私たちは、幼児期に見られる育ちの特徴として、例えば、いくつかの小石を大きい順に並べるとか、白い石だけ集めてみるとか・・・何気なく見る光景、このような他愛もない様々な遊びの中に実はしっかりと育っているものがあるのです。その育っているものとは、“秩序感”なのです。子どもたちの心に芽生えてきたこの秩序感は、足形テンプレートの枠にスリッパを重ねて置きたくなり、少しのずれも許さずにしっかり と置くのです。ちょっとでもずれていると気持ちが悪いのか細かく調整し、足形テンプレートにスリッパをぴったりと置きます。置き終わると 子どもたちは自分の行為に、少しのホッとした気分、置けた達成感、きちんと出来た満足感を感じるのです。この満足感こそが、『ぼくは、出来る!!』、『私は出来た!!』という“自信”につながって行きます。やがて、たくさんの自信が積もって行き、自立して行きます。子どもは、なんとなくその時期が来ると自立すると思いがちですが、自立を因数分解するとこんな中味があるのです。
 子ども自ら履きものをそろえている姿(モンテッソーリ教育の秩序感の芽生えに根差した活動)を目にする度に、その子の成長が感じられ、心からうれしくなります。
 私は子どもたちに『幼稚園が家で、家が幼稚園だ!!』と言っています。幼稚園で、履きものをそろえていても、お家や親せきの家で、出来なければまったく意味が無いと思っています。どうぞ、子どもが育つ夏休みを!! 

《手づくり冊子・ふじようちえんのひみつで育つ‼︎》
 先日、ある年長の女の子が、手づくり冊子「ふじようちえんのひみつ」(6ページ編)をもってきてくれました。内容も女の子が感じたままに綴られていて、その出来映えに関心しました。考えると当時(10年前)、テレビの「情熱大陸」の番組づくりのため、4月の入園式から7月半ばまでほとんど毎日のようにカメラに追いかけられ、もうたくさんだ‼︎と思いながらも番組制作に協力したことを思い出しました。そんな中、5月に小学館さんから書籍出版の話があり、私が口述するだけでいいからとお願いされ引き受けた次第です。その後、原稿が出来上がって内容確認してみると…私の言葉じゃないし、現実と違うし、内容が伝わらない、これじゃ嫌だと思い、急遽、私が書き直したものです。7月番組放映時には書店に並んでいました。その後、多くの方々にお読みいただき、ふじようちえんの本当の姿、子どもが育つところの様々な中味をご理解いただいたものとなりました。実は、この書籍、中国の北京師範大学の先生が訳して、中国全土で販売され、多くの方々がふじようちえんを知ることとなったのです。そんな「ふじようちえんのひみつ」をその子なりに手づくり冊子にしてくれて、とてもうれしかったです。それにしても、年長さんでここまでの企画力、構想力に益々、今後の成長が楽しみになってきました。すごい‼︎

《ある老人施設での実験から学ぶ、子どもの育ち…》
 以下の文章の出所ははっきりしていませんが、“子どもが育つところ”ふじようちえんの旨としている内容ですので、ここにお伝えさせていただきます。(少々、強めの言い回しになっていますが、ご承知おきください)

 かつて、ある老人ホームで行われた有名な実験があります。心理学者たちが二つのグループの高齢者に異なる環境を与え、その後の経過を観察したものです。
片方のグループには、衣服の着替えから部屋の掃除にいたるまで、すべての身の回りの世話をスタッフが行い、「あなた方は何もしなくていい」という至れり尽くせりの環境が用意されました。もう片方のグループには、部屋の模様替えを自分の意志で決めさせ、一鉢の観葉植物を手渡して「この世話はあなたがやってください」と伝えました。
結果は、残酷なほどに明快だったのです。自ら植物を育て、自分で決める権利を与えられた老人たちは、すべてを委ねられた老人たちに比べて、遥かに高い活力を保ち、その後の生存率も劇的に高かったのであります。
人は、誰かに頼られ、自らの意志で何かを成し遂げる「役割」があって初めて、自らの生を実感する。役割こそが人を生かしているのであるということなのです。

 この実験を子どもたちの日常に置き換えてみると・・・
「させてあげない」という名の善意:「転んだら危ない」「汚れるからやめなさい」「あなたはまだできないから、ママがやってあげる」そう言いながら、靴を履かせ、着替えをさせ、ランドセルを持ってあげる。食事を口まで運び、おもちゃの片付けも先回りしてやってしまう。子どもが何かを試みようとする前に、大人の手がさっと動く。一見すると、それは愛情深い、献身的な子育てに見える。しかし、その実態はかつての老人ホームと何も変わらない。子どもから、自らの能力を発揮し、世界に働きかけるという決定的な役割を奪っているのである。

子どもの「やりたい」は本能だ:二歳の子どもが「じぶんでやる!」と叫ぶとき、それはわがままでも反抗でもない。それは、人間という生き物が数万年かけて培ってきた、生存本能の叫びだ。自分の手で何かをつかみ、自分の足で歩き、自分の意志で選ぶ。その経験の積み重ねが、子どもに「自分はこの世界で生きていける」という根源的な確信を育てる。逆に言えば、その機会をことごとく奪われた子どもは、やがてこう学習する。「どうせ大人がやってくれる」「自分がやっても意味がない」と。それは単なる「やる気のなさ」ではない。役割を剥奪された魂が、静かに萎えていくサインなのです。

「転ばせない子育て」が転びやすい子を育てる:過保護な環境で育った子どもは、肉体的に傷つくわけではない。しかし、守られすぎた世界の中で、確実に何かを失っていく。「自分はできる」という自己肯定感。失敗しても立ち直れるという回復力。そして、自分が誰かの役に立てるという、生きることへの手応え。「つらい思いをさせたくない」という親や保育者の間違った善意が、実は子どもの精神を最も深く苦しめているという、皮肉な逆転現象がここにある。

子どもに与えるべきは「安全」ではなく「挑戦できる場」だ:大人がすべきことは、危険をゼロにすることではない。子どもが転んでもいい場所をつくり、失敗しても笑っていられる関係をつくり、そして「あなたにこれを任せる」と言える場面を、意識的に生み出すことなのです。自分で靴を履く。食事の準備を一緒にする。弟や妹の世話を少しだけ手伝う。クラスの植物に水をやる係を担う。どんなに小さくとも、「この役割はあなたのものだ」と手渡された瞬間、子どもの目が変わります。それは、生きることへの意欲が灯る瞬間なのです。子どもの育ちを支えるとは、子どもの代わりに生きることではない。子どもが自分の力で生きていけるよう、その傍らに立ち続けることである。

デコボコの園庭、どろんこ遊び、自分で見つけたきれいな石、お当番さん、お手伝いさんのお仕事・・・子どもが育つところ、ふじようちえんに繋がる内容でした。ご参考まで。

2026年度 1学期終業式 園長だより vol . 306 (2026.7.17)