ふじようちえん

園長だより 10月号

2006年11月02日 / 園長だより

藤幼稚園のご父母のみなさまへ  

          

さわやかな気候が続いています。秋本番ですね。何をするにも絶好の季節です。
子どもたちは、まだ数少ない落ち葉を集めたり、昔ハウスでひなたぼっこをしたりと秋の雰囲気を楽しんでいるようです。そんな中、屋根からの長いスベリ台にもすっかり慣れたお友だちの元気で大きな笑い声が聞こえています。(不思議ですが、滑り台をするとその子どもさんの性質に触れられたりしますね。普段とは違って意外に慎重だったり、大胆だったり・・・で。)
皆様、お元気でお過ごしですか? 秋は風邪のはじまりの季節でもあります。幼稚園でもこのところお風邪のお友だちが増えているようです。お気をつけ下さい。
2学期も、運動会、ファミリーランチ、さつまいものつる刈り、おいも掘り・・・また、藤の会活動にと大変お忙しい中ご参加、ご協力頂きましてありがとうございます。お蔭様で各行事・活動も無事終了出来ました。感謝申し上げます。
特に、運動会のお手伝いやつる刈り、おいも掘り等のお手伝いは、肉体労働系でした。その後、腕・腰・ふしぶしはいかがですか? そう言えば、綱引きに出て頂いた皆様、もう痛みは取れましたよね。運動会のつなひきのように、多くの皆様と子どもが育つ時間を共有できる事が何より幸せです。
≪子どもが育つ園舎≫
先日、あるクリーニング屋さんの出口で、『あら、先生』と久し振りにお会いした方がいました。
突然の出会いにもかかわらず、第一声が『先生、素敵な園舎ですねぇ~、今度見せて!!』でした。
当事者になると、とにかく新園舎での保育や子どもたちのことで無我夢中の日々を過ごしていますが、道路から見える新園舎に自転車通勤や散歩の方、または車の窓から声を掛けられることが多くなりました。外から見ると街でよく見かける幼稚園や保育園の風景と若干違う感じがするので興味があるんじゃないかな?なんて思っています。確かに、ガラス張りで平屋、楕円形の建物はあまり見たことがありませんし、その上、屋根の上で保育活動しているもんですから・・・。
そこで、ただ単に建物や景観だけに興味を示して頂けるより、もっとご理解頂きたい“子どもが育つ場所”としての園舎・環境を今回はお伝えしてみようと思います。
 まず、『地震に強い建物にしたい』という思いが基本にありました。そのため、平屋造り楕円形の園舎です。基礎から三角形のつなぎ合わせで構成していてとても軽量で強い建物なんです。仕様や構造だけではなく、『よりふじようちえんらしく』という園舎への思いの一端をお話させて頂きます。
まず、アートディレクター佐藤可士和さんが約3年前に来園された時、ふじようちえんを感じて頂き好きになってくれた“この空気を大切にしたい”“子どもたちは遊ぶことが仕事”“遊ぶことでいろんなことを学んでいく”“園舎は一つの巨大な遊具”と言う意見に私たちも同感し、すすめて来たプロジェクトです。
そして、建築家の手塚ご夫妻との出会いを通じて楕円形が誕生してきたわけです。
手塚先生いわく、『みんなが繋がっていて、ぐるぐると永遠の追いかけっこが出来て、仲間はずれが無い建物』と言われています。最初は、5×5cm位の小さなメモ用紙に描いた手書きの楕円形程度の走り書きから始まったそうで・・・。信じられませんがその手書きの楕円形が現在の形です。
(正直、かなり工事は難しいらしいんです。現場の方々には本当に感謝しています。)
手塚先生の楕円形に感じて、可士和さんもふじようちえんのロゴ(文字形)を考案して下さいました。子どもたちがハサミで紙を切っていることから、折り紙をハサミで切った状態のロゴのふじようちえんが誕生しました。可士和さん手作りのひらがなは50音ありますので何かの時に活用していきますので見つけたら『あぁ、あれだな。』と思い出して下さい。ちなみに、可士和さんはすごく多忙にもかかわらず、『星の形を切るのにほとんど一日中掛かったんですよ。』と言ってました。
それにしても、今をときめくお2人が、かたや折り紙をハサミで切り、かたや手書きの楕円をメモ用紙に書いてる・・・このI T時代に不思議ですよね。
さて、この前、『園長先生の好きなものなぁ~に?』と子どもたちに聞かれました。改めて考えてみると、建築計画相談中に言ったことを思い出しました。それは、私の好きなものは、自然の中にいることとショッピングモールのような都会的な中にいることなんです。森とお買い物、自然と都会、両方が好きなんですね。(欲張りですかね?)
そんな思いも込めた園舎は、外側が木々が多くある自然を大切にしている森、内側(園庭側)は曲線のひさしを持ったショッピングモール?(実際、何もお店はありませんが。)ですよ。なんて説明したりしてます。意外にそう感じれるからまた不思議です。
次にこの建物と子どもの育ちのつながりをいくつかお話しましょう。
・ 蛍光灯の光もいいんですが、“より目に優しく、身体や脳の育ちに少しでも貢献したい”という思いで電球を使っています。また、なんでリモコンスイッチの時代に敢えて、ひもを引っ張って点けたり消したりする方式?という声もあると思いますが、この事を通じて電球の中の作りと言うか?明りのつく仕組み、電気の道理を実感して欲しいなと思っているからです。電話がつながることを伝えるのに糸電話ごっこをしてみるのと似ていますね。
・ 極端な例で恐縮ですが、例えば雨の日、雨をマンション10Fの部屋から眺めた時に感じることは・・・雨よりも白い空かもしれませんね。窓を開けて傘差している人たちを見て始めて雨を感じていません?この子どもたちが大人になった時の社会は地下鉄やビルの連結でまったく雨に濡れなくても過ごせる時代、一生雨にぬれない時代?に生きていくような気もします。
『幼児期に雨水の実体験をしっかりとしてもらいたい』そんな思いから、幼稚園の屋根は雨が降ると何箇所かにある大きなトヨ?(正式にはガーゴイルと言うそうです。)から滝のように雨が落ちます。その滝に触れてみるのも楽しいし、一度濡れれば注意もしますね。その上、滝の勢いや量によって降雨量も判ったりして・・・。一度雨の日にご覧下さい。おもしろい光景です。
・ 今、部屋の中では裸足や靴下で過ごしています。確かに以前とは違う活動やお部屋での保育形態も新たに出来たり、数値では判りませんが子どもたちの動き、身のこなし方、または落ち着き度が良い方へ向いていると感じています。しかし、毎日靴下を手洗いしなくちゃならないとかトイレのスリッパがぬれている等のご意見も頂ています。あくまで“子どもが育つという観点”から、必要なこと必要じゃないことを整理して、子どもたちへの指導やマットなどの使い方を伝えたり、足や靴下が汚れている時の保育者の対応・注意点等を再度検証しています。園の方針として2学期の終わりまでにはお伝えしたいと思っています。

その子の人生の始まり、基礎の時期に正しい“くせづけ”はすごく大切です。それも生活のくせづけが大事です。生活のくせづけは心と行動のくせづけとも言い換えられます。幼稚園での生活の中にこそ“生活のくせづけ活動”があり、その子の育ちに貢献できるものです。
裸足・靴下になって初めて、ぬいだ靴をそろえる事を経験した子も多いと思います。外に向けて靴をそろえることは次の行動に移行するためにはすごく合理的な行為なんです。そんなことも含めて私たちは言い続け、伝え続けていこうと思います。子ども自ら靴をそろえている姿を目にするとうれしいですね。
 まだまだ“子どもが育つ場所ふじようちえん”のことを沢山伝えたいのですが次回にします。
ふじようちえんは、さらに本物とか、道理とか、実感という要素を整えて、より子どもたちの育ちに貢献できる園として、皆さまに大切に思われる存在になるべく精進していきます。よろしく。
園長だより vol.45  (2006.10.31)